佐 野そうなんです。さらに二つ目としては、賃金コストが20分の1、30分の1であったとしても、その人たちが技術を習得しなければ、労働力としては20分の1、30分の1に相当する人たちです。ところが、その人たちの中にも技術を広めるためのトレーナーがどんどん出てくるようになった。実は日本でもある時期までは、そうした人たちがたくさんいて、実際に技術を教えていたのですが、今ではそうした人たちが教えるべき人間がいなくなった。それが中国や東南アジアには、若い労働力としてたくさんいる。ですから、そういう人たちがどんどん外に出るようになり、自分たちの持っている技術を教え始めたことで、若いトレーナーがどんどん育っているのです。
平 尾同じようなことはスポーツ界でもあります。例えばラグビーでも、日本では一種の需要の関係からコーチとして残れなかったけれど、仕事の関係などでアジアの地域や南太平洋の地域へ行って、そこですごく立派なコーチングをして、その結果、その地域のラグビーがすごく強くなったという例があります。こうした例はラグビーだけでなく、柔道やバレーボールでもかなりあると聞きます。日本で技術を学んだコーチングスタッフが外に出るようによって、その技術がどんどん海外にも伝わるようになった。そうなるとプレイヤーとしての価値、つまり労働力は20分の1、30分の1ではなくなるわけですね。
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