佐 野最近日本では産業の空洞化と言われるように、急激に中国や東南アジアに日本の企業が移ろうとしています。これにはいろいろな議論があって、一つには中国や東南アジアの賃金水準が日本の20分の1、30分の1であることが大きな要因のように言われていますが、実はこの賃金水準は最近そうなったわけではなくて、以前からずっとそうだったのです。それでも、日本企業は国内で生産し、国内で頑張ってきた。海外に行こうという動きはなかった。それがなぜ急に、こぞって行こうとしているかというと、先ほどの言葉で言えば「グローバリゼーション」です。グローバリゼーションの大きな流れの一つに情報の流れがあって、これが非常に速くなった。日本の市場がどうなっているかが、海外にいてもすぐに分るようになったのです。それによって、海外に拠点を移しても国内にいる時と同じようにすぐにレスポンスできるようになった。その結果、ファッションの分野で言えば、どんなに流行が変わっても海外ですぐに作れるようなり、国内で生産する必要性がなくなった。合わせて物流も変わった。これは平尾さんも、神戸で震災があったことで、よくご存知だと思いますが、世界的に港の設備が良くなり、神戸の港が世界一と言われるような時代ではなくなりました。そうしたことから、中国や東南アジアから日本に物資を持ってくるのに、コンテナの輸送が非常に楽になった。こうしたこともグローバリゼーションの流れの一つということで、海外移転に伴うリスクが非常に低くなってきたのです。
平 尾なるほど。単に情報の流れが速くなっただけでなく、グローバル化に伴う流れとして物流のインフラ整備などもあり、産業や経済のグローバル化に一層拍車がかかっているというわけですね。
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