平 尾僕は、地域に密着したスポーツクラブというのは素晴らしいもので、これからの日本に必要なスポーツ基盤だと感じています。というのも、学校や企業がかつてのような力がなくなってきている中で、クラブが新しい基盤になれるのではないかと考えているからです。たとえば、「学校崩壊」という問題がありますが、最大の要因は家庭や地域での教育がなくなってきてしまったことにある。僕が子どものころにはまだコミュニティがあって、それがいい教育の場になっていた。口うるさいおじさんやおばさんが、どこにもたくさんいて(笑)。そういうコミュニティーを復活させるのは難しいけれど、スポーツが違った形でコミットすることで、新たなコミュニティーを再生できるのではないかと考えているからです。
原 田おっしゃるように、昔は地域が教育してくれたけれど、それがダメになって今では学校も頼りなくなった。そういう社会で、「子どもをあのクラブに預けたら安心」というような基盤となるスポーツクラブを作る必要がありますね。それも、いろいろなスポーツができる総合型のクラブが。これは、スポーツ界だけの問題ではなくて、地域や教育、もっと言うなら、これからの日本の国益につながっていく問題でしょう。
平 尾今はテレビゲームやパソコンの普及で、遊びも個人になってきたし、仕事も個人でできるものが非常に多くあります。集団で何かをしなくてもよくなってきている。しかし、最終的にはチームワークはものすごく重要です。社会や会社など共同体では、横や縦のつながりなくしては生きていけないのが現実ですから。そのためには、小さなところからチームワークを経験していくことが必要です。それがたとえば、野球やサッカーだったり、あるいは個人競技であっても部活としてそこにチームがあるわけです。そういう中で経験を積んでいくことで、大人になって社会に出たときに、その共同体の中でうまく生きていける能力を身に付けることができる。集団で何もしてこなかった人間がいきなり共同体に入っても、うまく機能できない。スポーツには、そういった役割もあると思っています。
原 田そのとおりだと思います。これからの日本にとって、スポーツは益々大きな役割を担っていくのではないでしょうか。
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