平 尾そんな状況の中、新たな在り方としてよく言われるのは「所有」から「支援」へということです。一企業がひとつのチームを持つのではなく、複数の企業や団体でチームを支援していくようなスタイルにすれば企業や団体の負担は軽くなる。先ほど話したように、下のレベルのチームが充実しなければ、トップチームを支えることはできないという意味からも、企業スポーツがこれ以上衰退しないように考えていかなければなりません。

青 島おっしゃるです。ただ、支援という形にして多数の企業がバックアップするとなると、各企業の広告的な効果は薄れてしまいますよね。

平 尾そうしたときに、どういう効果を見出すのかということですね。直接的な広告効果だけではなく、支援していくことが社会貢献になり、あるいはメセナでもある。それによってその会社のステータスが上がるという社会的仕組みができないと、支援のしがいがない。今まではそういった流れがなかったので、モデルになるものが必要な気がしますね。

青 島支援することのメリットを明確にしていかなければ。

平 尾そうなんです。このSCIXを立ち上げて、スポーツがいかに企業に支えられているのかということを実感するようになりました。考えてみれば、オリンピックに出る選手の半分以上は、企業スポーツに身を置いている。ですから、企業スポーツがなくなれば、競技力は大幅に低下することは避けられません。企業に支えてもらわなければ成り立たない。ならば、例えば神戸製鋼ラグビー部は神戸の華だから応援してやろうという企業がいて、年間1000万円の支援をしてくれたならば、それには税金がかからないような、そんな国ぐるみの仕組みを作っていくべきだと思いますね。

青 島そうなんですよ。そういう支援のしがいがあるシステムを確立していくことが、まず必要なんです。

平 尾そうなれば、「税金で持っていかれるぐらいなら、地元のチームを応援しよう」という企業も出てくるでしょう。そういう大きな改革も必要です。

青 島「生涯スポーツ」とか「健康作り」という方向だと、まだ国や地方自治体の理解は得られるけれど、トップ選手の育成や環境整備などに税金を使おうということにはなかなかならないですね。

平 尾そう、理解がないですね。でも、考えてみれば、トップ選手の育成は、子どもたちの育成にも関わってくる。まったくかけ離れた問題ではないんですよ。日本には変な平等主義があって、才能があるからと特別扱いすることを嫌います。でも、才能がある選手を育成して、世界に通じるトップアスリートに育てることで、その競技の人気が出て、競技に親しむ機会が増えたり、子どもたちが憧れてやる気を出すということにも通じるわけです。行政には、そういう視点も持ってもらいたいと思いますね。

 

 
 
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