「勝たなければ意味がない」という言葉がありましたが、とくに競技スポーツにおいては「勝敗」をどうとらえていくかが重要になってきますね。
勝 田そうですね。勝利を目指して努力したり挑戦し続けるところに、競技スポーツのおもしろさ、すばらしさがあります。もし、勝ち負けをなくしたり軽いものにしたりすると、おもしろくなくなります。ですから勝ち負けは非常に大事なのですが、負けたからといってすべてが否定されるものではないんです。ところが、トランプや麻雀で負けるのとは違って、競技スポーツの場では、敗戦がその人のすべてを否定するようなところがあります。指導者の「スポーツは勝つこと意外に価値がない」という考え方に問題があると思いますが、それだけでなく、「勝つことは善であり、負けることは悪である」というような日本独特の風潮も影響しているのではないでしょうか。おそらく、日本ではスポーツを精神修養や教育的な手段としてとらえてきた側面が強いため、そのような考えが生まれてきたのでしょう。しかし、本来スポーツというものはそれ自体を楽しむものなんです。
本の中にも、「スポーツは、人々の楽しみのために生まれた文化である」と記されていますね。
勝 田はい。スポーツとは、生活を充実させるために人間の手によって創り出された文化なんだと認識してます。ですから、コーチはスポーツ文化に寄与するためにも、スポーツを文化としてしっかりと考えながら携わるべきだと思っています。つまり、豊かな文化に携わっていることを認識し、自分自身が豊かになるようにすること。簡単に言えば、「自分が幸せでなければ、幸せな指導はできない」ということなんです。
いいコーチの条件ですね。
勝 田そうですね。コーチをしていることを幸せだと思える自分がそこにあるかどうかということが、一番大事なのではないでしょうか。第一章を読み進む中で、そういったをじっくりと考えていただければと思っています。
第1章【終】
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