和 田自分の得意なものと苦手なものに関して、苦手なものを身に付けさせるために、得意なものを捨てしまうのは危険です。得意なものをいかしながら苦手をどう克服していくかという欲張りな考え方をしてほしい。どちらもやらせるなんて子どもの負担になると思われる親御さんも多いようですが、外国に勝っていこうという話になったら両方ともできないと困るということも多いでしょう。スポーツでも産業の分野でも、これまで外国と戦ってきた人たちは、知識偏重型、詰め込み偏重型の日本の教育を受けてきた人もたくさんいます。けれど、その教育が取り柄となって勝ててきた部分もあるわけです。だから、それをすべて捨てて、アメリカ型の教育に移行してしまうというのは危ないと思うんです。現実に今のアメリカは、昔ながらのアメリカ流教育に、日本的な詰め込み教育をプラスし始めています。
平 尾そうですね。我々は、自分たちの良さについて、それが何であるかということと、どういう強みなのかということを、客観的に見つめ直す必要がありますね。
和 田そうなんですよ。
平 尾その中で、社会が変わってきたために別の力が必要だとなれば、その力をどう付けていくか、どういう訓練をしていくかということを考えていくことですね。我々日本人が持っている良さを十分に理解していないところもあって、右がいいとなるとみんな右に飛びついて、左がいいとなると一斉に左に行ってしまう。そういう傾向がありますね。
和 田はい。日本人の知性面において最も問題だと感じるのは、白か黒かハッキリ分けすぎることです。心理学的には「二分割思考」と呼んでいますが、そういうタイプの人間は、ちょっとうまくいかないと激しく落ち込んだり絶望したりしてしまいがちです。人間関係においても、些細な悪口を言われただけで、敵だと思いこんでしまう。でも、実際に世の中を見てみると、完全な善人や悪人はほとんどいなくて、グレーな人たちばかりなんですよ。ちょっと悪口言われたくらいでその人との関係を断ち切っていたら、人間関係なんて築いていけない。逆に、いいことを言ってくれた人を全面的に信用していたら、詐欺師の思うつぼですからね。
|