日本のラグビーは03年から『スーパーリーグ』(仮称)のスタートが決り、ようやく世界を視野に入れた強化の時代を迎えようとしている。そうした中、東の強豪サントリーラグビー部は、いち早く「世界標準のコーチング、組織作り」に取り組み、01年度の日本チャンピオンに輝いた。「神戸(製鋼)を倒して日本一になることが、日本ラグビーの底上げを図ること」と従来の日本型ラグビーから脱皮、世界最強の豪州スタイルを取り入れ、見事、チャンピオンの座をチームにもたらした土田雅人サントリーラグビー部監督。平尾理事長とは同志社大時代のチームメイトで、平尾ジャパンではコーチとして代表チームを支えた無二の親友。果たして、その目に「世界標準のコーチング」とはどう映っているのか? 03年から始まる『スーパーリーグ』で、日本のラグビーはどう変わるのか? 企業チームを率いるひとりとして、今後のあり方をどう捉えているのか? スポーツ界全体の中で、ラグビーは今後どのような役割を果たして行くべきか? かつての平尾ジャパンで共に世界に挑み、現在は最大のライバルである神戸製鋼をGMとして率いる平尾理事長と、それらを忌憚なく語り合っていただいた。

S C I X昨年12月に「トップリーグ」の概要が発表され、「日本ラグビーのトッププレイヤーを強化する」「日本ラグビーの水準向上に貢献する」「ラグビーファン拡大への牽引役となる」「企業スポーツの振興への貢献、地域との協働によるスポーツ振興を達成する」という4点を目標に掲げ、03年9月からスタートすることが正式に決りました。要するに社会人のトップレベルの12チームによる「トップリーグ」を頂点に、その下に各グレードのリーグ戦などを配しながら、ピラミッド型のラグビー界を、一日も早く構築し、その中で強化と育成を図って行きたいというのがラグビー協会の意図のようですが、ただ気になるのはJリーグのようにユースチームの設置を義務付けるなどの、協会主導の育成策が、今回は発表では見られなかったことです。トップチームの試合数が増えることは、間違いなく強化につながると思いますが、その一方で次代を担う世代の育成もスタートさせないと、世界との差は縮まりません。

平 尾実際、トップリーグの構想段階では、協会から各企業にラグビースクールの設置というか、設立も共にやってくれないかという話もあったようです。要は。Jリーグのユースを作るのと一緒だと思うんですけどね。

S C I Xそれは義務ではなく、意向という形でですか?

平 尾まあ、それくらいはお願いしてもいいだろうという判断だったようですが。僕はそれはそれでいいことだと思うし、そういうことは積極的にやったらいいと思います。ただ、これは僕らがSCIXを立ち上げた際に直面した問題でもあるんですが、すでに既存のラグビースクールが数多くあって、それはそれで人材育成という面でかなり機能を果たしているんです。ですから、それとは別にやっても、実はなかなか難しい面も出てくる。こういう点も視野に入れて、ラグビー協会が、既存のラグビースクールをうまく統合しながら、運営していく方法を考えないと、せっかく草の根的にやる気になっている人たちが「今まで、自分たちがやってきたのに……」と思われるようではまずい。いくらトップリークといっても、そこは新参者なわけだから、そういう人たちのやる気をそがないように協会も配慮して欲しいと思いますね。

土 田実際、関西はラグビースクールが盛んなんだろ? 僕の知り合いでも、供を小学校2年でラグビースクールに入れているとか、1学年に一チームづつあって、それで試合をしていて、親も一生懸命応援しているというようなことを耳にしている。

平 尾関西は盛んやね。しかも、既存のラグビースクールというのは、その地域にしっかり根付いているものが多いから、ほかに新しいスクールができたとしても、なかなかそこには来てはくれない可能性もある。だから、協会がうまく誘導して行って、トップリーグの運営するスクールなりにスーッと流れて行くような道筋を作ってやらないと。そこで、しっかりとした理論や技術をもった人間が、きちんと指導できるような体制ができればいいと思うんだけどね。

S C I X確かにそうですね。

●プロフィール
土田雅人(つちだ まさと):1962年10月21日、秋田市出身。77年、高校日本代表で副将を務める。このときの主将が平尾誠二。秋田工業高校を卒業後、同志社大に進学。NO8として活躍し、平尾とともに同志社大を大学選手権三連覇に導く。85年、サントリーに入社、89年からはラグビー部主将に。現役引退後、サントリーラグビー部監督、日本代表ヘッドコーチを歴任。2000年、再びサントリーの監督となり、今年2月には神戸製鋼を下して日本一に。著書に、神戸製鋼を倒して日本一になるまでの道のりをつづった『勝てる組織』(小学館)がある。

 

 
 
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