S C I X先ほど、これからはラグビー界も選手の雇用の在り方が多様化して行くだろうという話がありましたが、これはラグビーに限らず、これからのスポーツのあり方にすごくいいヒントになりそうですね。
平 尾そうですね。これまでのように一元的にこれだというのではなく、個人によってという考え方なんですが……。ただ、これは個人が自分の中に「自分の将来像」というものを持っていなかったら、会社にも言えない話です。「自分は3年間、一生懸命ラグビーをやりたい。でも、そこから先は仕事のキャリアを積みたい」というね。そうすると、仕事もラグビーもというケースも起こってくると思います。中には、プロのコーチを目指す選手も出てきますから、現役中に「コーチとしての才能がある」ということであれば、コーチングの教育を受けさせたりしてもいい。その上で、「何年か後には、プロのコーチとして契約しますよ」ということであれば、企業もそういうスタンスでその選手を見ておく必要もがある。今までのように、一元的に全選手を同じ寮に押し込めて、みんなで同じ生活するということでは、これからはなかなか対応できないのではないかなと思います。
S C I X先ほど、プロ選手としての雛型という話がありましたが、企業スポーツの雛型という意味ではどうでしょう。今回の「トップリーグ」は一つのモデルとして、ほかの企業スポーツの雛型になるか可能性はないでしょうか。
平 尾う〜ん、まだ中身が今ひとつ、ね(苦笑)。日本協会からはいろいろな説明はいただいているが、まだまだ見えない部分が多いんですよ。ただ、どこの競技団体も、「競技の普及を考えたら、プロ化の方向性しかない」というような言い方をしているところが多いんですが、実際はそうとも限らなくて、プロ化することによって発生するリスクも実は非常に大きい。例えばJリーグの場合も、今回たまたまワールドカップが自国開催になり、そこそこの成績を上げることができたから、ワーッと盛り上がりましたが、実際は非常に危ない橋を渡ったような気がします。実際にチームの単体を見たら、本当に黒字化しているところはあまりない。ほとんどがしんどい経営をやっているわけですね。赤字が出れば、その補填を親会社や関係会社がしているとか。今回のワールドカップで、一気に盛り返したところもあるようですが、サッカーでさえそんな事情なわけですから、ほかの競技団体になるともっと難しい。一部のプロ化や選手個人レベルのプロ化はあっていいかもしれませんが、全体がプロになってワーッと走るというのは、今は非常にリスクが大きいと思いますね。
土 田選手個人も、そんな状況の中でのプロ化は魅力を感じないんじゃないでしょうか。
平 尾そうやね。
土 田プロになって、新聞に毎回大きく取り上げてもらうというのは難しいわけだから。
平 尾またラグビーの場合は、世界との差もありますからね。だいぶ強くなってきたとは言っても、「オーストラリアが本気になったら、どうなのか」とか、「イングランドが本気になったら、どうなのか」……とかね。
土 田それは正直きついよね(苦笑)。
平 尾そういった世界レベルの情報がどんどん入ってくる時代に、いくら協会が「代表強化のために……」と言ってもなかなか難しい。そういう意味では、プロ化というのもそう簡単にはいかない部分も多いではないかという気がします。
<<つづく>>
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