S C I Xその一方で今、企業スポーツは危機的状況に立っています。ラグビーに限らず、いろいろなスポーツで休部や廃部が続いています。そういう中で、敢えてトップリーグを立ち上げる意味というのは、日本代表の強化ということがもちろん主眼にあることは理解できますが、逆に言うと、その中に入って来られないチームは篩(ふるい)にかけられてしまうという危惧もあるように思うのですが?
平 尾そうですね。そこが非常に難しいところで、トップリーグを始めたと同時に、廃部あるいは休部というところが出てくる可能性はあると思いますよ、今のこの社会情勢から言えばね。だから、そうならないように協会や関係者はその配慮をしていかなければいけないですよね。それとトップリーグが始まり、競争力が増して選手の負担がまた重くなるかもしれないといったときに、仕事を持っているチームは実際に業務との両立が可能かどうかという問題も出てくると思います。今まで以上に、たぶんゲームは過激になる。それで就業時間が本当に保たれるかどうかということですね。また、地方に遠征に行ったときに、その日に行ってゲーム終えて帰って来られれば問題ないでしょうが、東西の交流が始まって1泊しなければならなくなると、ものすごく拘束時間が長くなる。そうなったときに、今までの週休2日で1日だけラグビーで拘束されるのは問題なかったものが、今度は2日間拘束されることによって、週休2日では選手のプライベートの時間がなくなるという問題もある。特に家庭のある選手の場合は、それでちゃんとした社会生活を営めるかどうかという問題も出てくる。そういう拘束時間が長くなることによって、本当の意味での社会人として両立した生活が営めるかどうかというのは、まだ本当に未知数です。ただ、競争が過激になればなるほど、「その分、たくさん練習しよう」というチームが出てきますから、そうなると他もどんどん引っ張られて行く可能性は高い。
土 田そうなるよね。
平 尾間違いなくそうなるんですよ。そうしたときに、そういうスタイルでいいのかどうか。これは非常に難しいとこじゃないかという気はします。そうなったときに、協会はどういう指導、どういう方向性に誘導できるか。もし、「それは、企業の問題だから……」と突き放すようでは、あまりにも無責任かなという気はします。
土 田そのとおりだね。
平 尾だから、何かある方向に導いてほしいなという気はするんですよ。その点を僕も協会関係者にも聞いたことがあるんですよ。「結局、新リーグはプロ化へのプロローグですか?」と。そうすると「そうではない。プロではないんだ。これはこのままのスタイルなんだ」というわけです。そうなると、本当にそれで済むのかという疑問も湧いてくる。だから、現場の我々としては、とにかくやってみないと分らないということです。
土 田うちもどうなるのか、僕自身にも分っていないし……。
平 尾分らないんですよ。ただ、新リーグを立ち上げて本当に人気が出て、集客力が上がればラグビー界にとっても非常に大きな転換期になる。もう一つは、そうなることでプレーヤーの会社内での位置付けが、これまでと変ってくる可能性がある。それをどううまくマネージメントしていくか。そういう問題もチームにとってはあると思います。
※日本ラグビー協会はこのほど、03年から始まる新リーグの名称を「ジャパンラグビートップリーグ」、通称「トップリーグ」とすることを決定しました。それに伴い、本企画でも今後はその名称に統一させていただきます。
<<つづく>>
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