学校スポーツが、新しい局面を迎えている。これまでは道徳教育をその意義の中心としてきたが、ここにきて判断力やコミュニケーション能力など社会人として求められる重要な能力を養う場として見直され始めている。とくに、ラグビーは1チーム15人という構成や、各プレーヤーが瞬間、瞬間の判断力でボールをつなぐという競技上の特性から、社会人として重要なインテリジェンスを身につけるスポーツであることが語られ始めてきた。学校スポーツとしてのラグビーに新たな期待が生まれている反面、中学・高校という難しい年代の指導についてSCIXには実に多くの悩みや疑問の声が寄せられている。そこで今回は伏見工高時代の同友であり、現ラグビー部監督の高崎利明氏をお招きし、高校スポーツに求められるコーチングについて話を伺った。

平 尾全国的には、高校や中学のラグビー部の数は減少しているけれど、京都はそれほどでもないんだろう?

高 崎一時期減ったけど、今は持ち直してきているね。京都は昔からラグビーが盛んな土地だったこともあって、小学生が通うようなラグビースクールもたくさんあるし、指導者が多い。『スクール・ウォーズ』に触発されてラグビーを始めた世代が、今、指導者になっているからね。だから、中学や高校の部活動として盛んに行われている。

平 尾今、ラグビー部がある中学はどれぐらい?

高 崎京都府では、23、24校。

平 尾僕らのころは、たしか8校だったよね。

高 崎うん、そんなもんだった。

平 尾3倍に増えたわけだ。大阪はどうなの?

高 崎減ってはいるけど、もともと多いから。ラグビー部のある中学も、100校を超えるんじゃないかな。大阪は高校ラグビーでずっとトップレベルを維持しているけど、それは底辺がしっかりしているから。

平 尾そうなんだよね。

高 崎中学の部活動としてラグビーが盛んなのは大阪と京都ぐらいで、九州や東京はラグビースクールのほうが多いね。

平 尾僕らのころは、いわゆる不良といわれるような生徒をラグビー部に入れるというケースがけっこうあったよね。それはそれで、機能を果たしていたんだと思う。最初は先生に強引に誘われて渋々ラグビー部に入ったとしても、そのうちにラグビーに目覚めて、ラグビーを通して自分の将来を描けるようになったりするケースが非常に多かった。学校の部活動ならではのことで、スクールにはない役割だった。まだ、大阪や京都の学校ではそういった役目をしているのかもしれないけれど、全国的に見ると流れはずいぶん変わってきているような気がする。

高 崎そうだね。伏見も流れがちょっと変わってきた。ラグビーのエリートを目指してやってくる子どもも多いからね。

 

●プロフィール
●高崎利明(たかさき としあき):京都市立伏見工業高等学校ラグビー部監督
1962年、京都市生まれ。伏見工から日体大へと進み、スクラム・ハーフとして活躍。高校時代は平尾誠二と同期でHB団としてコンビを組み、高校3年のときに第60回全国高等学校ラグビーフットボール大会で優勝を果たす。大学卒業後、中学校の保健体育の教諭として8年間、教壇に立つ。94年、恩師である山口良治氏からの誘いを受け母校伏見工に戻り、ラグビー部コーチに。98年に山口氏の跡を継ぎ監督に就任、2年後の第80回大会で優勝。高校日本代表監督なども務め、若手選手の育成に尽力している。

 

 
 
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