平 尾いいご指摘だと思います。実はそれが一番、今のスポーツに欠けているところだと思います。経済ではよく「メガコンペティション」という言葉が使われますが、スポーツも完全にメガコンペティションの時代に杯っています。もはや巨人対阪神の時代でなく、野球対サッカーという競技間同士の戦いが始まっていて、負けた方が衰退していくという厳しい時代です。もっと言うと、スポーツ対テレビゲームの時代です。特に幼年期の部分では、スポーツは圧倒的にテレビゲームに負けています。
佐 野ハハハハ。
平 尾なぜかというと、今、局長が言われたように、時間と空間で彼らはそっちの方が面白いと思っているからです。実際のスポーツのように、大した練習をしなくてもテレビゲームの中なら中田のプレーがリアルにできてしまう。それだけ高度なレベルになってきているんです。
佐 野なるほど。
平 尾ただ、スポーツはつらい思いをするかもしれないけれど、そのプロセスに非常に面白みがあって意義がある。それをうまく教えていかないと、テレビゲームには勝てない。ますます衰退していくのではないかと思っています。そういう意味で、すでに大きな戦いが始まっているということを自覚して、そのための準備をしなくてはいけないと思います。
佐 野私は最近ゴルフぐらいしかやりませんが、あれは見るスポーツではなく、自分でやるスポーツだと思います。もちろん、タイガー・ウッズが18番でイーグルをとるのを見るのはいいんですが(笑)、でも、あれをテレビゲームでやっても面白くない。そこをもう一度、人間がリアルに動いて何がやれるかということに持っていく。たとえばラグビーなら、相手のプレーの裏をかくためにどれだけ練習するか。それが達成できたときに、どれだけ満足感が得られるか。そうしたことを、みんなに教えていかなければいけないと思いますね。
平 尾おっしゃる通りだと思います。
佐 野それは企業も同じです。ただ単に人を雇って「さぁ、働きなさい」と言ってもダメなんです。今は企業入らなくても、フリーターとして食べて行こうと思ったら、それなりに食べていける。そうではなくて、この仕事を何年間かやっていくことが、いかに自分にとって達成感が得られることか、ということを出していかなければダメなんです。
平 尾そうですね。
佐 野みんなが自分なりの達成感を感じられる……「この仕事は自分しかできない」とか「自分は仕事を通してこんなことができた」とか、そういう喜びをどう持たせていくか、という作業をしていかなければいけないと思います。
平 尾本当にその通りだと思います。
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