平 尾今日は難しい(経済の)話を分りやしくしていただき、とても勉強になりました。佐野局長に長時間、こうしてお話いただく機会もなかなかないことなので、最後に「スポーツが今後の経済の発展に果たす役割とは?」について、うかがいたいのですが。今回のサッカーワールドカップでは、神戸市も開催地の一つになっています。サッカーに限らずスポーツが社会に果たす役割、経済に及ぼす影響ということも、これからは非常に重要になってくると思うのですが。
佐 野経済的な説明で申し上げると、今の日本というのは一人当たり3万5千ドルの経済です。それぐらいの所得水準にある。かつ子供の数が減っていくという状況の中で、本当の欲求は何かというと「いかに有効に自分の時間を使わせてもらえるか」、また「いかに有効に自分の空間を使わせてもらえるか」ということだと思います。人間はどんなに頑張っても1日5回も食事はできません。2000カロリーを摂取すれば足りるところを、5000カロリーも採るというわけににはいかない。だから、その間に「良い時間を使う」「良い空間を利用する」ことが大事になる。そういう意味で、スポーツというのは見るにしても、やるにしても、自分の時間をどう使うか。24時間の有効な使い方の一つになると思います。
平 尾24時間ずっと仕事しているわけにいかないし、映画を見ているわけにもいかない。ずっと食事をしているわけにもいかない。そうすると、自分で体を動かしているということも大事だというわけですね。
佐 野そういうことですね。それとある種のエンターテイメントとして、スポーツを「見るもの」としても大事だと思います。プロフェッショナルなスポーツというのは、大部分は見るものです。そのためには、見るものとしてちゃんと成立していなければいけない。そのためにスタジアムを作り、交通手段を整えたりというのは、資本効率や空間の利用効率としては決して良くはありませんが、それでも日本人にとって一番良い場所、日本に見に来られる人にとって一番良い空間だと思ってもらえる場所でなければいけないと思います。
平 尾そういう意味では、そうした空間を日本人だけで使う考え方ではいけませんね。
佐 野そういうことですね。逆に言うと、日本人も含めてそういう人たちをどこまで移動させられるかだと思います。スポーツ界も日本人と日本人が試合をしていると思い続けてはいけない。もっともっと国際的な試合があったらいいし、それも日本対どこかという国際試合でなくてもいい。もっとインターナショナルになっていい。まさにサッカーのワールドカップが来たように、別の国の人たちが日本で試合をしてくれていいと思います。
平 尾なるほど。
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