佐 野資本過多状況を放置しておくと、結果的に日本は縮み思考になると言いましたが、私はそのへんの仕組みをどうするか考えないといけないと思っています。単純に構造改革、規制改革すればいいという話ではないのです。スポーツを例に取れば、日本は今後どれだけの数のスポーツをプロスポーツとして取り組んでいくかですね。世界には数多くのスポーツがあり、バラエティに富んでいますが、それら多様化されたスポーツのあらゆるゲームをやっている国は、ほかにあまりありません。日本は見ていると、かなりの可能性を追求しているというか、すごい数のゲームがある。集中と選択はされてはいない。これでは日本が誇るべき競争力のあるゲーム、チームはできないですよね。
平 尾それは僕もおっしゃるとおりだと思っています。
佐 野私はいろいろなことをやってはいけないというのではない。いろいろなことをやるのは大事なことです。ただ自分がやることと、競争力のあるスポーツを作るというのは違うのです。たとえば昨年、私は「WTO(世界貿易機構)」の会議でカタールのドーハに行っていたのですが、昔はWTOの会議といえば「関税を下げよう」「輸入制限を止めよう」ということぐらいしかやっていなかったのが、今は「知的所有権問題をどうするか」「投資問題をどうするか」「環境と貿易問題をどうするか」といろいろなものが広がっている。間口が広がって、ますます複雑になってきているのです。これと同じようにスポーツではオリンピックなども、これだけ競技種目を広げてしまうと、何をやっているのか分らなくなってしまう、ということも出てくる。今の社会の構成というのは、そこに行き詰まりを感じ始めているように思いますね。
|