佐 野これは単純過ぎるかもしれませんが、そういうものの考え方なんです。ところが、資本ということで見れば我々は全部道具を持っている。ゴルフもやればニスもやる、ラグビーもやれば水泳もやる。全ての道具をすでに持っているわけです。ところが、世界にはまだ貧しい国があってサッカーボールが一つしかなかったとしたら、このサッカーボールの資本率は非常に高いですよね?

平 尾確かに高いですね。

佐 野そうなんです。このボール1個についての価値は非常に高い。だから、日本の子供達が持っているものが同じボールで、それを年間15時間しか使わないとしたら、15時間の価値しかないわけです。だから、それだけ不良債権が残っているという判断なのです。

平 尾そういう見方があるんですね。

佐 野そういう基準で、我々はバランスシートを作っているのです。ただし、このサッカーボールもたくさん使っている国に持っていき、1時間いくらで貸せば、すごい利益が出る。日本ではたった15時間しか使ってくれないのですから。そのように考えていくと、日本には基本的に非常に大きな資本がある。その反面、日本という国の所得水準が上がり、どんどん生活が豊かになって、生活様式やものの考え方も多様になり、女性の結婚年齢も上がってきた。その結果として、悪気でも何でもなく、結果統計を取ってみると、どんどん人口が減ってきた。2007年からは本当に人口が減ってしまう。そういう状況になってくると、次に何が起こるかというと、「鉄道も多すぎる」「道路も多すぎる」「なぜなら、日本にはもう人が少なくなったのだから」という発想にどんどんなってくる。結果的には、日本全体が縮み思考になってくるのです。

平 尾なるほど……。

佐 野実はここに、日本という国の抱えている基本的な難しさがあるのです。実際、そういう視点でこの国の資本を見ると、非常にわかりにくい国になってくる。

平 尾う〜ん、言われてみると、確かに難しい問題ですね、それは。

<<つづく>>

 
 
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