佐渡僕の言葉が足りないからなのかもしれないけれど、「こうしたら絶対におもろいのに」「このほうが、もっとにいいのに」ということに、ついてきてくれる人がいないことがよくあるんです。カーテンの一件にしても、「そうだね、そうしよう」とはならなかったし。

平尾感度が違うんですね。そこが難しいところですよ。

佐渡平尾さんの本(『「日本型」思考法ではもう勝てない」)の河合(隼雄)先生との対談のなかに、「おもろいことだけやってきた」「おもろくないことは、おもろくする」という行がありますが、それが僕にぴったりなんです。今回の対談のテーマは『集団を率いるためのリーダーシップとは』ということですが、僕はリーダーシップを意識したことはないんですよ(笑)。

平尾無意識にリーダーシップを取っているんでしょう(笑)。それで話しで思い出したんですが、キューバに行ったときにカストロ(国家評議会議長)のリーダーシップを物語る話を聞いたんです。バチスタ政権に追放されていたカストロが革命を起こすために70人の仲間とともに船でキューバに戻ってくるわけですが、同士たちと約束していた日よりも3日遅れてしまったんです。そのため、待っているはずの同士たちはバチスタ軍に追いやられてしまい、革命は困難を強いられたんです。では、なぜカストロは3日も遅れてしまったのか。彼らは20人も乗れるだろうかという小さな船に、70人も乗っていたんため、途中で仲間が1人が海に落ちてしまったんです。みんなはそのまま行こうとしたらしいんですが、カストロが「探せ」と命じた。そのために、到着が3日遅れてしまったと。この話を聞いて、これがカストロが潜在的に持っているリーダーシップなんだと思ったと同時に、リーダーシップとは「瞬時のヘルプ」なんだと思ったんです。

佐渡いい話ですね。

平尾キューバに行って驚いたのは、カストロは国民に愛されているんです。しかも、みんなこの話を知っているんですよ。彼の人気のバックボーンになっているように感じましたね。

佐渡カストロは意図的ではなく、自然に「瞬時のヘルプ」をしたんでしょうね。

平尾そうなんですよ。彼の人間性が生み出した判断だったと思います。ものが落ちてきたら、反射的にパッと拾ってあげるようなそんな感覚ですね。神戸大学の金井(壽宏)先生が、「リーダーは大きな絵が描けるけれど、人がついてこなければ真のリーダーではない」とをおっしゃっていたんですが、人がついてくるにはどうしたらいいかと考えていたのでは、むしろ人はついてこなくなるような気がしますね。

佐渡そうですね。そういう意味では、僕の仕事も含めて集団を率いていくということはとても人間くさいですね。人が好きでないとやっていけない商売です。

平尾そう、その通りですね。人間に興味がないとね。今日は楽しい話しをありがとうございました。

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