村上平尾さんが日本代表の監督をなさっていたころは、外人の選手が多くいましたよね。
平尾はい。ニュージーランドの選手が6人ぐらいいました。
村上彼らと日本人選手との間に、考え方の違いとか微妙なズレなどはありませんでしたか?
平尾そうですね…。ズレというのはあまり感じませんでしたが、決めごとを作らないで流れの中でゲームを作っていくという外国人選手の感覚を理解できない日本人選手が多かったようです。僕は海外でプレーした経験があるので、多少なりともそういった感覚はわかるんですが、日本人選手は往々にして決めごとがないと不安になってしまうんです。流れの中でゲームを作っていけるチームは理想ですが、日本人選手の中で不安が蔓延したのではいいチーム作りはできません。チーム全体としてのメリット、デメリットを考えて、ある程度決めごとを作りながら外国人プレーヤーの個人技を軸にしていこうと考えましたね。逆に、日本人選手の優位性も感じましたよ。
村上それは、どんな部分ですか?
平尾僕が感じたのは、体内にある目盛りが日本人選手の方が小さいということなんです。
村上体内の目盛りですか?
平尾どういうことかというと、「ちょっと」という言葉がありますね。「ちょっと動いてみろ」とか「ちょっと早くパスを出してみろ」などと使います。当時のキャプテンはアンドリュー・マコーミックという選手だったんですが、彼に「ちょっと早く」というと、1秒ぐらいの単位でとらえるんです。彼にとっては、それが最小の目盛りかも知れない。ところが、日本人選手には0.1秒ぐらいの目盛りがあって、その単位で合わそうとするんです。だから決めごとを徹底して精度を高くするということに関しては、日本人はものすごくよくできる。ただ、先ほども言ったように相手によって状況が変わるという前提のもとでやることに関してはあまり得意ではない。だから、ニュージーランド流に個人プレーを全面に出したラグビーはやりにくかったですね。
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