平尾村上さんはサッカーをはじめとして、いろいろなスポーツについて書かれていらっしゃいます。ラグビーについても取り上げられたことがありますが、ラグビーの現状についてはどんなふうに思われますか?
村上日本のラグビーがなかなか強くなれないことに関しては、プロ化されていないことが大きいと感じます。というのも、プロフェッショナルなところで鍛えられることによって達するレベルというものがあると思うからなんです。野球にしてもサッカーにしても同じですが、サッカーの場合は93年にプロになってからずいぶんとレベルが上がりました。アマチュアとプロではモチベーションが違うし、練習する物理的な時間も違う。企業に勤めて仕事をしながらラグビーをするという構造のまま日本ラグビーのレベルアップをはかるのは、限界にきているんじゃないでしょうか。ただ、体格やメンタリティーを取り上げて、ラグビーは日本人に向いていないという言い方は間違っていると思います。ヨーロッパで生まれたスポーツだから、日本においては歴史が浅いし、それがハンディになっているということはあるでしょうけれど。
平尾そうですね。日本には集団の球技として野球が昔からあって、プロフェッショナルとしてもかなり長く存在しています。だから、僕たちは野球を見ることにも慣れているし、プレーすることにも慣れている。ただ、ラグビーやサッカーのゲームシステムは、野球のゲームシステムとものすごく違っていて、我々はまだ不慣れな気がしますね。
村上ラグビーやサッカーのゲームシステムには、なじみが薄いということですね。
平尾はい。野球はゲームメーカーとプレーヤーが別々で、状況判断はゲームメーカーである監督に委ね、プレーヤーは監督の指示に精度よく応えるという構造なんです。でも、ラグビーやサッカーは、ゲームメーカーとプレーヤーは同一で、ボールを持った瞬間にそのプレーヤーがゲームメーカーになってプレーを続けていく。ところが、先ほど村上さんがおっしゃったように歴史が浅いから、瞬時にどんどん状況が変わり、ターンオーバーされて急にディフェンスに回ったり、逆に一瞬のうちにアタックをするということに慣れていない。ただ、一瞬でも気を抜いたら点を取られるというような激しいゲームが国内でも頻繁に行われるようになれば、そういうゲームシステムに慣れてきてレベルは高くなると思います。
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