第5回ラグビーワールドカップが開幕。日本代表は悲願の決勝トーナメント進出を目指し、激戦の予選リーグを迎えているが、今や精神的支柱としてJAPANを支えているのが、バックスリーダーの元木由記雄選手だ。テストマッチ出場の名誉を表すキャップ数は60を超え、史上最多記録を更新中の彼がラグビーを通して何を表現し、伝えようとしているか。オーストラリア入りする直前に前監督でもある平尾理事長との対談をお願いした。(取材:10月3日/神戸製鋼にて)

平 尾トップリーグもいよいよ後半戦に入ったけど、今季のスティーラーズ、あるいは元木由紀雄選手というプレーヤーのここに注目してみて欲しいというものはある?

元 木そうですね。やっぱりスティーラーズとしては、平尾さんの時代から伝統として受け継いできた“状況判断”ですね。そういうところをしっかりして、まずは、ミスの少ないゲームを心がけたいことと、その一方では昔のプレーにあまり固執するのではなく、臨機応変に変えるところは変えながら戦っていきたいと思います。メンバー的にも大分駒が揃いましたので、今年は本当にいいラグビーができると思います。僕自身はやっぱり基本は“強さ”なので、それがなくなるともう僕ではないと思っているので、やはり(自分の強さを出して)前へ行きたいなと思っています。チームが勢い付くようなプレーを、ディフェンスでもアタックでもしたいと思いますね。

平 尾トップリーグの場合、下位になると9位、10位は下位リーグとの入れ替え戦に回り、11位、12位は自動的に降格する非常に厳しい制度になっている。そうなると、勝ちにこだわるということで、高校野球で言えば1点を取るために、バント戦法に頼るような、そんな縮こまったプレーになってしまうという恐れもある。そうではなくて全12チームがそれぞれの特色を出した戦い方……、神戸で言えば“神戸マイスター”と言われるようなオープン攻撃というものがあるわけだから、それぞれが自分達の特色を出し合ってぶかり合ったら、非常に魅力あるリーグとなると思うね。

元 木今、言われたところは、僕らも非常に危惧しているところで、日本人気質というか、そういう面でバント戦法に終始するようだとプレーも小さくなって、見ている人にもつまらないゲームになってしまうと思います。

平 尾これは僕の個人的意見だけど、もし、そういう傾向が出てくるようなら、日本協会はすぐに手を打って、ローカルルールを作るとか、改正するとかして、トップリーグでしか通用しないルールを作りながら、そうならないような手当てをしていかなければいけないと思うね。

元 木そうですね。

平 尾そうしないと、ようやく走り始めたらトップリーグの意味がない。

 

●プロフィール
元木由記雄(もとき・ゆきお):1871年8月27日、東大阪市出身。英田中学でラグビーと出会い、大工大高、明治大学を経て神戸製鋼入り。高校時代から抜群の突破力とハードタックルで鳴らし、将来の代表CTBとして嘱望される。91年、明大2年時に日本代表北米遠征で初の代表入り、対米国戦で当時の平尾選手の負傷交替でデビュー、初キャップを得る。以来、不動の12番として日本代表を支え続けている。ワールドカップは91年の第2回大会以来、4回目の出場。代表キャップ61(W杯前まで)は歴代最多記録を更新中。

 

 
 
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