平 尾その一方で、トップリーグのスタートを機に、各企業の所属選手が社員から契約社員にという流れも生まれつつある。ラグビー界全体がオープン化という、一種のプロ化の流れの中で、ラグビーを自分の仕事として捉える選手が増えてきているわけだけど、こうした流れについては、元木個人としてはどんなふうに考えている? 代表選手という立場で「ある程度の期間、選手がラグビーに集中する条件を整えてくれたので、体のケアができるようになった」という話もあったけど、それを対チームに置き換えると、チームの中でもいいパフォーマンスをするためには、やはり契約選手という立場が必要なのかどうか。
元 木そうですね。契約するということで、ラグビーに専念できる環境ができるというのはうれしいですね。ただし、契約選手になれば僕らも“プロ”になるわけですから、やっぱり悪いプレーをすると批判も受ける。そういう危機感というかリスクも、契約する選手はみんな持たないといけないと思いますね。今の流れを見ていると、そういう機会が出来たので、じゃあ自分もという雰囲気がありますから、もっとプロ化したということを、みんなが認識してやらないといけないと。プロ野球と違ってラグビーの場合は、現役が終わってから、何か仕事があるかといったら、まだまだ未知数の部分が多いので、そういった道も自分たちで開拓して行かなければいけないし。そういった不安もありますね。
平 尾実は僕が一番心配しているのはそこでね。一つの課題として、今一番力を入れなていることは、例えば契約した選手がケガなどで早めに現役を終わった場合、その選手をその後どのように活かしていくか、というところなんだよ。ラグビー協会も、そういう点は模索しているけれど、まだスタートしたばかりで、そこまでは具体的なものは提示出来ていない。むしろ、契約選手を抱えることになった企業側の方が切実な問題になりつつある。「お前、プロになるのはいいけれど、もしケガをしてプレーを断念しなければならないような事態が起きたら、そのリスクは自分で負わなければならないんだぞ」と。そういうことも理解させて、選手には選択の機会を与えなければいけない。加えて今、元木も言ったように、もし何かあって早目に現役を終わったらどうするか。あるいは、同じケガでも時間をかければ復帰の可能性がある、という場合はどうするか。そうした選手は、契約選手した、しないに関わらず、チームとしては何とか面倒見てやりたいし、フォローもしてやりたい。そういう切実な問題を抱えながらスタートしたのがトップリーグだということを、もっとみんな認識する必要があると思うね。
元 木そうですね。
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