平 尾髪型とかそういうものは、個性の範疇であって、野球の上手下手とは別の次元の話なんです。要するに、個人というものをもう少し認めてあげないと。もちろん、それを認めることでチーム全体の戦力が落ちてしまうのであれば、それは許容はできません。でも髪の毛を染めたから戦力が落ちるということはあり得ないし、逆に個性を認めないことで才能のある選手がやる気を失ってしまうほうがマイナスでしょうね。
青 島目立ちたいとか、ヒーローになりたいとか、勝って喜びたいとか、スポーツをやる感覚というのはそういうものだと思います。今までないものを求めて動き出し、そして手に入れようとする行為だし、変身願望でもある。それは、例えば髪を染めたいということと通じているものでもある。そういう個性の主張をある程度認めていく中で、本当のおもしろさや楽しみは何かということに気づけばいいんですよ。日本代表の選手たちはみんなわかっていますよ。
平 尾見ている人の中には、「あんなことしているから…」って言う人もいるだろうけれど、それはお門違いですね。
青 島そう。ああやって個性を主張しながらも、自分一人が目立つために個人プレーをしようなどということは誰も考えていないし、やるべきことはチームの中で機能することだということをよくわかっている。個とチームの一員としての在り方を、うまく区別しているんですね。僕はそれを頼もしいと感じます。22、23歳の若者なんだから、個を主張するのは当然ですが、自分を主張しながらもピッチ場では組織の中に自分を埋没させていくことも良しとしている。髪の毛を赤く染めてた戸田君だって、攻め上がることはほとんどないけれど、相手が来れば死にものぐるいで体を張ってディフェンスをするという自分のミッションを徹底してやってのけた。
平 尾どっちが本分かということです。戸田君で言うなら体を張ることが本分であって、髪の毛なんか関係ない。それを、混同して評価する人が多いんです。
青 島多いね。例えば戸田君のミスでオウンゴールでもして負けたら、「髪の毛赤くしてるからだ」と責める人が絶対に出てくる(笑)。まったく別のことなのに。
平 尾でも、そのリスクを背負ってやっているわけだから、それもまた、たくましいですね(笑)。そういえば、僕は日本代表を見て、前回のワールドカップのときよりもずいぶんたくましくなったなと感じたんですよ。技術の上達は短期間でも見て取れるけど、たくましさが現れるのは時間がかかるものなんです。
青 島一人で海外に勝負をしに行っている選手も多いからね。外に出るということは、たくましさを身につける古典的で絶対的な方法でしょうね。
平 尾武者修行ですね。
青 島そうですね。やっぱりトップステージで海外と戦うのであれば、日本を出ていくことも必要でしょうね。海の向こうの選手がどれほど賢くて、どれほど強靱な肉体なのか、あるいは意外と足が遅いとか、そういうことを実際にその場に行って戦うことで理解すると余裕が出てくる。知らないことで募る不安を消すことができますからね。
平 尾そうですね。サッカーに限らず、いろいろなスポーツにおいても世界との競争力をつけてほしいものですね。本日は、ありがとうございました。
<<終わり>>
|