平 尾星野さんも、その辺はピッタリ当てはまったわけですかね?
青 島星野さんは阪神に行ってからスタイルを変えましたよね。中日時代のように選手を殴ったら、コミュニケーションがとれないということに気がついて変えたんだと思います。今は拳を封印していて、むしろ「いいぞ、ガンバレ」っておだてている。監督とのコミュニケーションがとれていると、「よし、監督のために頑張るぞ」という気持ちが選手の中に出てきますからね。
平 尾そういう関係を構築していくことが必要ですよね。ただ、非常に微妙で、コミュニケーションといってもしゃべる量だけではないし、お互いの価値観がどこかで接点を持たなければ通じないことがたくさんあります。
青 島そうなんですよ。これは野球に限ったことではありませんが、年輩の監督と若い選手のコミュニケーションは、昔に比べ取りにくくなっているように思いますね。価値観があまりにも違う。例えば、サッカーの日本代表はトルシエ監督だったから操れたような気がします。だって、11人ピッチに立っていて、髪の毛を染めていない選手は一人もいないんですから。戸田(和幸)君なんか、真っ赤にしていた。あの髪型が良いか悪いかは別にして、許容できる価値観なり感覚を身につけていないとダメなんです。フランス人のトルシエは、あの程度のことは当たり前と受け止められる。だって、肌の色も言語も違う人たちと折り合いをつけながら生きてきたわけですから。髪の毛を染めるぐらいの個体差は、なんでもないでしょう。
平 尾ハハハ、確かにそうかもしれない(笑)。それを、「今の若い者は」なんて言ってしまうようでは、ダメなんですね。個体差なんだと、違和感なく自分の中に入ってくるようでないと。
青 島そう思いますね。もちろん、チームによって茶髪禁止というならそれでもいいんです。実際、ヤンキースではひげを生やしてはいけないという決まりがあります。メジャーリーグにはそういう厳しい規律を持っているチームがたくさんある。その多くは「それが、うちのチームの伝統なんだ」というもので大切にしているけれど、それ以外のところではいくらはみ出してもいいじゃないかという考えなんです。一切合切封じるとか、型にはめようとするのは無理なんですよね。
平 尾そうですね、おっしゃる通りです。
青 島サッカーの日本代表選手のあの髪型や色を、野球界はまだ受け入れられることができないんですよね。昔ながらの硬い考えを引っ張っている人たちがたくさんいて、そういったことに対して「野球をする以前の問題だ」と言ってしまう。その価値観は僕は理解できるけれど、「野球以前」と言ってしまうと、そこから進めないですよね。
平 尾日本のスポーツ界というのは、競技として差異はあるけれど「スポーツマンだから」ということが多いですよね。例えば、野球ならば坊主頭で品行方正だとか(笑)。そういうグラウンド外での押しつけがましいルールが非常に多い。でも結局は、投げて打って点を取るというのが、野球というスポーツのいちばん大切なところ。それなのに我々のスポーツ観では、例えば「スポーツマンシップ」という言葉をやたら美化したりして競技そのものよりも周辺のところが大事にされてきました。先ほど「型にはめる」と言われていたけれど、ガチガチの型で括って「これに入らなければダメ。そんなのはプレー以前の問題だ」と言っていたのでは、スポーツそのものが拒絶される可能性もある。坊主じゃないと野球ができないというなら、みんな野球をしなくなりますよ。
青 島実際、そういうことでやめていく子どもがたくさんいるんですよ。
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