青 島ただ、社会人野球だけでなく、バレーボールやバスケットなどを始めとする企業スポーツそのものが今は難しいところにきていますよね。これまでは、運動部は健全な心身の象徴という位置づけだったし、社員みんなで応援することで会社のまとまりを持とうともしていた。さらに、娯楽が少ない時代には、例えば野球部を応援に行くこと自体が娯楽にもなっていた。でも今は、個人の趣味は多様になり、何でもできるようになってきたので、「みんなで野球部を応援に行きましょう」ということにも無理があるんですね。さらに、広告媒体が少なかった時代には、野球部が活躍して新聞記事になることが会社のイメージアップにもつながり、効率のいい投資でもあった。今は広告に関してはもっと直接的、効果的にアプローチしなければ、広告効果はあまり期待できない。つまり、野球部に年間2億円とか3億円かけていても、広告宣伝費として考えると効率がものすごく悪い。結局、利益を生まないところに投資し続けているようなものだから、会社の経営が厳しくなってくれば、真っ先に切られてしまうのは仕方がないことなんですよね。ある種、感傷的な気持ちから「スポーツは文化なのに、なぜ廃部にするのだ」という意見も出ます。その言い分はよくわかるけれど、食べるお金がないのにおしゃれをして遊びに行くお金は出せないのが現実ですよ。ただ、企業スポーツが全盛の時代に身を置いていい思いをさせてもらって、さらに今もスポーツに関わっている僕としては、今までのやり方が合わなくなってきたなら、これからどうするのかというところに知恵を絞って、企業スポーツの新しい形を生み出すところに参画していかなければならないという気持ちがあるんです。
平 尾そうですね。青島さんがおっしゃるように、企業スポーツは割が合わなくなってきている。要因を従業員として抱えているわけですが、このコストたるやすごいものですよ。個人競技で5,6人の選手を抱えればいいというのならば、採算がとれるかもしれないけれど、団体競技だとそうはいきません。トップチームの力を保つために、出場人数の3倍が必要とされます。つまり、ラグビーならば15人掛ける3で45人。サッカーなら33人、野球なら27人ぐらい。
青 島ちょうどいいところですね、27人ぐらいが。
平 尾さらに、施設も必要だし、試合や合宿などにもすべてお金がかかる。それでも、昔は割に合っていたんですが、景気は後退しているし企業スポーツを取り巻く環境も悪化しているこの時代には、今までのようなチームの所有の方法では無理があります。
青 島そうですね。
<<つづく>>
|