-
山本:
-
初めて『中学・高校生の部』の参加した時に選手たちとタッチフットボールをしたんですが、めちゃくちゃ楽しくて。これまでは試合に出るためにチームメイトと鎬を削り、ミスに対してシビアな世界でプレーしてきました。SCIXの選手はミスを恐れずチャレンジしていて、改めてラグビーは楽しいものだということに気付かされて。SCIXラグビークラブは部活動でないですし、強制されているわけではありません。けど、ラグビーが好きだという気持ちから週に2度グラウンドに来て練習をしています。中には遠くから電車に乗って通っている選手もいて、雨の日でも足を運んで練習に励んでいる。どの選手も意欲的で、練習が終わってからもパスしたり、キックしたり、ボールを触っていて、ラグビーが好きな気持ちが伝わります。
-
山本:
-
特に難しさは感じないですね。『中学・高校生の部』『大学・社会人の部』に共通して言えることですが、『ラグビーを楽しむ』ことを一番に考えて指導していて、選手たちにラグビーを楽しんでもらいたいという思いが強いです。
-
山本:
-
まず15人でプレーすることの楽しさを感じてほしいという思いがあり、『中学・高校生の部』では六甲アイランド高校や東灘高校といった近隣の学校に声をかけて、合同練習をしたりしています。もともと兵庫県には東灘高校をはじめ、単体では大会に出ることができずに合同チームとして出場している高校も多いので、SCIXラグビークラブを中心に一緒にラグビーを楽しむ輪を広げていけたらと思っています。今後は『中学・高校生の部』の人数がもっと増えてSCIX単体で15人制のチームが組めるくらいになり、周りの学校と試合ができるようになればと考えています。
-
山本:
-
兵庫県に起きていることに関していうと、報徳学園高校や関西学院高校といった強豪校は部員が非常に多いのですが、それ以外の高校は部員不足で苦労しています。8月からSCIXラグビークラブとの兼任で、コベルコ神戸スティーラーズのアカデミーでも中学生を指導して感じるのが、強豪校に進むことができないなら県外の高校でラグビーをするという選手が多いことです。そういう選手に対して兵庫県内の部員不足で悩んでいる高校と連携しながらSCIXラグビークラブとして何かできることはないかと模索中です。それと、SCIXラグビークラブは誰もが気軽にラグビーを楽しめる場所です。ラグビーに興味を持って、SCIXで一度経験してみて楽しかったから競技を続けたいという中高生が増えることで、近畿圏の競技人口の増加に寄与できるのではないかと思います。
-
山本:
-
指導する前は週に2日の練習しかしていないので、どうなのかなと思っていたんですが、どの選手もレベルが高くて驚きました。僕の高校時代よりもはるかにレベルが高いです(笑)!もちろん、1つ1つのスキルは花園大会を目指すような強豪校でプレーしている選手と比べると劣るかもしれないですが、もともとベースがあるので1から教える必要はありません。それに自主性を重んじるSCIXラグビークラブならではなのかもしれないですが、指示を待つのではなく、自分で考えて行動できる選手が多いなという印象です。
-
山本:
-
SCIXラグビークラブで『中学・高校生の部』『大学・社会人の部』を指導する機会をもらってコーチとして良い勉強をさせていただいています。例えば言葉の選び方で選手それぞれが違う解釈をしてしまうことがあるので、指導する際、言い方、伝え方には常に気をつけていますし、日々の練習から学ぶことが多いです。
-
山本:
-
大学や高校に行って、スクラムだけを教えるということはありましたが、練習メニューを作って継続的に教えるということは初めてのことです。コーチングについては引退後にA級コーチの資格を取得しました。3日間ほど朝8時から夕方5時まで座学研修を受けて、その後2日間熊谷で実技研修。ほかにも、陸上やサッカーなど他競技の方々との研修もありました。そこで学んだことをSCIXでの指導に活かしながら、今日はこんなアプローチで教えてみようと考えながら練習に向かっています。
-
山本:
-
『中学・高校生の部』は簡単なメニューだと高校生は退屈に感じるだろうし、難しすぎてもいけない。全員が楽しくできることは何だろうと考えて、コベルコ神戸スティーラーズでやってきたことをベースに、みんなができるようにアレンジして練習メニューに取り入れたりしています。あとは、選手に考える力を身に付けてほしいと思っているので、『こういうプレーをしなさい』と言うのではなく、『このプレーをしたけど、どう思う?』など問いかけるようにしています。自分で考えることでプレーが良くなったり、気付きがあったりしますから。『大学・社会人の部』ではトップチームで実際にやっていることを求めている選手が多いので、コベルコ神戸スティーラーズでやっていた練習メニューをしたりしています。
-
山本:
-
パスや走るコースなどはフォワードであっても練習してきましたし、経験を積んできているので問題なく指導することはできます。ただ、自分の考えや意見を持っている選手も多いので、『何でこの練習をしているんですか?』とバックスの選手から聞かれた時に、ちゃんと理由を説明できるようにはしています。何のためにやっているのか目的が分からない練習にならないようメニューを考えるのは大変ではありますが、やりがいを感じますし、毎日が充実していますね。
-
山本:
-
『大学・社会人の部』では3試合しているんですが、実は僕も出場しているんですよ(笑)。選手たちから『出てほしい』とお願いされて出ることになったんですが、それも楽しいですね。
-
山本:
-
どうですかね(笑)。実は『中学・高校生の部』でも最初の頃は人数が少なかったので、僕も一緒に練習に参加して体を動かしながら教えていました。
-
山本:
-
トップダウンではなく、選手がフラットに接することができて、意見も言えるような指導者になっていきたいと思います。具体的にはヤマハ(現・静岡ブルーレブズ)時代に指導を受けた(長谷川)慎さんのようなコーチを目指していて。慎さんは選手との距離が近くて一緒に盛り上がってくれるコーチです。そういう選手と近い指導者になっていきたいですね。
-
山本:
-
まずコーチとして成長することが目下の目標です。その上で将来的にトップチームのスクラムコーチとして指導ができればと考えています。あと、SCIXコーチとしては、SCIX主催の中高生の大会を開催したい。SCIXラグビークラブとして出場できる大会は春の兵庫県県スポーツ大会と4月の全国高校7人制大会兵庫県予選しかありません。それ以外に、ほかの合同チームを集めて大会ができたらいいんじゃないかと。SCIXで頑張っている中学生、高校生が日頃の成果を発揮できる場所が増えたらいいなと思っています。
コーチとして奮闘する日々を「めちゃくちゃ充実しています」と笑顔を見せ、中学生・高校生の選手らが教えたことを吸収しぐんぐん成長している姿を見るのが楽しいと話す。持ち前の行動力で近隣の高校とも積極的に連携し、合同練習を行うなど、SCIXラグビークラブに新しい風を吹き込む。「一緒に楽しみながら合同練習をすることで、その高校の部員が増えるかもしれないですし、SCIX自体の人数も増えるかもしれない。地道なことかもしれませんが、ラグビーが盛り上がるためにできることをやっていきたいですね」。そう頷く、山本コーチの手腕に期待がかかる。
山本 幸輝(やまもと こうき)
1990年10月29日生まれ。滋賀県野洲市出身。
もともと野球をしていたが、中学2年の時に楕円球に触れ、八幡工業高校でスクラムを組み込んでスキルを身に付け、近畿大学へ。ヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)入団1日目、日本代表スクラムコーチを務めた長谷川 慎氏から左プロップへの転向を薦められ、以降は『1番』で活躍。2019年のワールドカップ日本大会は残念ながらメンバーから外れるも、日本代表のチームソング『ビクトリーソング』の歌詞を考案し、チームビルディングに貢献した。2021年からコベルコ神戸スティーラーズに移籍。NTTリーグワン2022-23第15節花園近鉄ライナーズ戦でリーグ通算100試合出場を達成した。2024-25シーズンをもって現役引退。2025年8月よりSCIXが地域連携協定を結ぶコベルコ神戸スティーラーズのアカデミーコーチとの兼務で「SCIX中学・高校生の部」「大学・社会人の部」の指導に携わる。
取材・文/山本暁子