平 尾それと今、企業スポーツというものが変革の時期を迎えていますね。いろんな形に姿を変えていかないと存続も難しくなってきている。そういうことの中で社会貢献という一つの役割も担おうとしていますが、学校スポーツも変わっていかないといけないと思うんです。たとえば今、教育問題、教育問題と教育のことがいろいろと問題になりますね。でも、僕が思うのは今、言われている教育問題というのは、少し学校に責任を持たせすぎ。教育問題という言葉でくくって、何でもかんでも学校に責任を押し付けすぎなんですよ。本当はもっと家庭でやらなければいけない教育というのがあって………たとえば、しつけであるとか、人間関係における最低限のマナーであるとか、そういうものがまずベースにあって、そのことがある程度分ったうえで学校という集団の中に入って行って、ある程度のことができるようになる。それが、ここ(家庭教育)がないもだから、ここ(学校教育)までメチャメチャになっている。だから、教育そのものがおかしくなっていると思うんです。

中垣内なるほど。

平 尾それと、最近はコミュニティというものの教育がゼロですよね。中垣内さんの時代はどうだったか分りませんが、僕らが子供のころというのは町内会とか、まだ地域コミュニティがある時代で、近所には口うるさいオッサンとか、お節介なおオバサンとかがたくさんいたんですよ。

中垣内僕らのころもいましたね(笑)。

平 尾おったでしょう(笑)。で、そんな中で結構、いろいろなことを教えたてもらったんですよ。スポーツで言えば野球なんか学校でやるより、近くの連中が集まってやるのが主だったですからね。それで自営業かなんかの暇なオッサンが、指導してくれたりね(笑)。

中垣内ありましたね、そういうことは(笑)。

平 尾僕はこれがコミュニティの教育だと思うんですよ。こういうものってものすごく大事で、役割分担もあると思うんです。これは最近、僕が持論にしていることなんですが、学校にスポーツも家庭教育も全部押し付けるんじゃなくて、うまく分散していく必要がある、と。学校は学習をきちんとする場であって、そのためのベースとなる人格形成というのは(学校)の外でやってもいいのではないか。それは家庭であったり、地域コミュニティであったり。で、そのコミュニティでできる教育の中に実はスポーツというものもあって、その役割というのは非常に大きなものがあると思うんです。

中垣内私もそう思います。

平 尾たとえば堺にある中学校でバレーボールをしたい子がいた、と。本人はいつか日本代表になりたいとか、海外に出てプロになって、世界の舞台で勝負してみたいと思っている。そんな子がいた場合、ただ部活というだけでバレーボールのことをよく知らないような顧問のもとでやったとしても、本人が望むような方向で上手くなれるかどうかは難しい。それなら、こういう子たちが、たとえばブレーザーズに入って指導を受けるだとか、その気になればできるような環境をコミュニティが提供してやる。このとき、大事なのはただバレーボールを教えるだけではなくて、何かその子の人格形成につながるようなものをプログラムとして組み込む。そうすると、親も喜ぶだろうし、学校も喜ぶだろうしということで、そうした環境整備というのがこれからの地域密着型クラブには求められると思うんです。

中垣内おっしゃるとおりだと思います。ブレーザーズでも現在、ジュニアチームを作ってトップチームの選手だったスタッフが指導に当たっていますが、今、平尾さんがおっしゃったような子供の人格形成につながるようなプログラムとなると、まだまだこれからでしょうね。

平 尾問題はそこなんですよ。ブレイザーズであればバレーボールは教えられる。神戸であればラグビーは教えられる。でも、それだけでは部活の延長にしかすぎない。そこにプラス何か人格形成につながるようなものがないと。ただ、これは非常に難しい問題で……人材、システム、周りの環境なども重要でしょうし。でも、そのプログラムの構築に向かって取り組んでいかないと、これからの地域密着型クラブの存在意義は高まっていかないような気がしますね。

中垣内おっしゃるとおりですね。僕らもそれに向かって取り組んでいけるようにしたいと思います。

平 尾ぜひ頑張ってください。僕らも地域密着型クラブの先駆者としてブレイザーズの活動は注目もし、また応援もさせてもらいますので。

中垣内そうですね。ぜひ今度、機会があればラグビーも教えてに来てください。

平 尾それ、いいアイデアやね(笑)。で、ブレイザーズからはバレーボールを教えに来てもらうと。

中垣内はい、ぜひ(笑)。

平 尾これは冗談じゃなくてぜひ実現しましょう。クラブ間に人的交流が生まれることで、コーチングのノウハウという面でもものすごくいい刺激、財産になりますからね。その件だけでも今日はお会いできてとても良かったです。ありがとうございました。

中垣内私のほうこそ、どうもありがとうございました。

≪終わり≫

 

 
 
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