平尾村上さんは、これからのスポーツのあり方については、どんなふうに考えていらっしゃいますか?
村上これからはスポーツの持っている役割が、どんどん大きくなると思っています。なかでも大きな役割となるのが、社会格差を埋めるということではないかと考えています。
平尾といいますと?
村上国がある程度近代化を達成して豊になると、国家としての求心力はなくなってきて、個人という意識が強くなる。すると、そこには個人格差が生まれます。すでに、日本もそういった道を歩んでいますが、これからその傾向はますます強くなるでしょうね。
平尾つまり、貧富の差が拡大しますね。
村上そういう社会では、貧しい人々は非常にストレスを感じるし、自分が豊になれない社会に対して怒りを持ったりします。子どもたちも同じで、夢や希望を抱けずに荒れてしまうというようなこともある。それを放っておいたら、どんどん悪くなる。たとえば、極端な思想集団や新興宗教にのめり込むとか、オヤジ狩りをするとか。そういった悪い方向へ進んでしまう子どもたちがいっぱい出てくるわけですよ。
平尾すでに、出てきていますね。
村上そう。だから、そういうことを防ぐためには、カタルシスを与えてあげないと。
平尾スポーツには、そういった力があるということですね。
村上そうなんです。カタルシスを与えることで、悪い方向へ行かないようにする。だって実際にボールを蹴ったり走ったりするのは、気持ちがいいですからね。
平尾そうですね。理屈を抜きにして、楽しいもんです。
村上カタルシスを与えて社会のリスクをヘッジできるものは、スポーツや芸術、芸能ぐらいかな。他にはあまりないんですよね。
平尾なるほど。
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