河 野現在のドーピング対策については、種目でいうと「陸上」「水泳」「ラグビー」の3つが、非常にアクティブに行われています。
平 尾なんで、ラグビーなんですか?
河 野ドーピング対策で問題になっているのが、国や地域として競技成績はいいけれどアンチ・ドーピングに関する体制が整っていないところをどうすればいいかということです。そこで、モデルケースを作ろうということになった。そのひとつに、ラグビーが取り上げられたんです。ラグビーは、オセアニア地域で非常に盛んだし、国際的にも高いレベルにあるけれど、アンチ・ドーピングの体制が十分でない国もあります。
平 尾なるほど、そういうことですか。
ところで、陸上や水泳はほとんどが個人競技だから、ドーピングを行っていた場合、「お前の成績を抹消する」とか、「出場停止」というペナルティを与えるのは簡単ですよね。ところが、ラグビーは集団競技であるから、ペナルティをどうするのかという問題があります。
河 野そうなんです。非常に難しい問題です。
平 尾以前、ラグビーのワールドカップで陽性反応の出た選手がいましたが、結局注意だけでおとがめはなかったということがありました。今後は、そういうわけにはいかなくなってくるのでしょうね。
河 野そうですね。ラグビーだけでなくチームスポーツでは、個人にドーピングの陽性反応が出ても、チームのそれまでの成績は残るし、チーム自体に対してペナルティがないというのが、これまでのIOCのルールだったんです。そのことについては、ずいぶんと討議されてきました。その結果、2003年から世界アンチ・ドーピング規定で、ペナルティが明確化されました。
平 尾新しいルールができたわけですね。どんなふうに変わったのですか?
河 野わかりやすくいうと、陽性反応の出た選手がチームに2人以上いたら、そのチームはターゲットの対象となります。ターゲットにされるというのは、抜き打ち検査を頻繁に行うということで、それで複数の選手が陽性となったら、ある期間のチーム成績は抹消されるし、出場停止もあり得る。ただ、その後のことなどについては、もっと討議を重ねて決めていかなければなりませんが。
平 尾チーム競技においても、ドーピングへのペナルティがハッキリとした形で示されたということは、それ自体が抑止効果にもなるでしょうし、期待されますね。
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