平 尾そういう感覚が、これからの企業の組織などには絶対に必要になってくるでしょうね。従来の「管理」、「マネージメントする」ということは、いろいろな制約を作って管理しやすい状況にすることでした。つまり、自由度を削っていくわけですね。でも、先生のお話を聞くと、むしろ部下の自由度を拡大させていくことなんだと思いますね。たとえばミドルマネージメントならば、現在のように部下の生活行動や勤務態度を管理することではなく、上とケンカをしてもっと大きな枠を作るということ。個々の裁量権を拡大してあげて、「もっとやれるぞ」といって、思う存分自分の能力を発揮できる場を提供していくのがミドルマネージメントとしての本当の仕事なんでしょうね。ところが、現在の中間管理職といわれる人たちの多くは、「さぼるな」「まじめにやれ」と注意することが仕事のようになっている。部下からは煙たがられ、上司からは「もっと厳しくしろ」と言われる損な役回りですよ(笑)。本当ならば、この中間管理職という立場にいる人が、どれだけ部下の自由度を拡大できるかによって、その企業の運営にも大きな影響が出てくると思うのですが。
今 田おっしゃるとおりですね。日本では“マネージメント”を「管理」と訳しますが、もとの意味は「何とかして、できるようにする」ということです。ですから欧米では、ミドルマネージメントならば上司と部下の間にいて、部下が能力を発揮しやすいように、「何とかしてあげる」わけです。しかし、日本の場合は、勤務査定をして人事考課をして、といったことばかりが中間管理職の仕事として強調されている。それに失敗すると、マネージメント能力がないと言われて。
平 尾日本で「マネージメントできてない」というと、「ちゃんと、管理ができていない」という意味になりますね。
今 田そうです。本当は、「何とかしてあげてない」という意味なんです。これからはマネージメントの本来の意味に近づく必要がありますね。
<<つづく>>
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