原 田さらに、ラグビーに関していえば、アジア・マーケットの充実も課題です。まだ未開拓の分野なので、日本が先導することによってアジア・マーケットを作っていくことができるのではないでしょうか。

平 尾そうなんです。そのためには、キーワードとして「ルール・ツール・ロール」の3つの見直しが必要だと僕は思っています。

原 田なるほど。

平 尾ルールは文字通りルールのことですね。ツールはラグビー用具、ロールは役割です。ラグビーはイギリスで生まれたスポーツですが、その当時のイギリス人は体の小さなアジアの人間がプレーするということは、おそらく考えてもいなかったと思います。だから、同じような人種、同じような体格の人間がプレーすることが前提となって、ラグビーというゲームが出来上がった。ところが時が経ち、日本人のように体の小さな民族もラグビーをするようになった。そうすると、体格的な面で圧倒的に不利になるようなことが、たくさん出てくるわけです。

原 田確かに、そうですね。

平 尾やっぱり、これは見直さないといけない。またツールの面で言えば、たとえばラグビーボールの大きさはあれでいいのか。NBAはスピードを出すためにボールを小さくしたといいますが、そういう発想がラグビーにあってもいいのではないか。ポールの高さやグラウンドの広さなどもそうだし、それからポジションもそうです。

原 田それらを見直すについては、日本はスポーツでもアジアの中の先進国ですから、日本がリーダーシップを取ってやるべきでしょうね。

平 尾そうなんですよ。日本としての意見というのではなく、アジアの意見として発言していく。その方が説得力があると思います。IRB(国際ラグビー機構)は、ラグビーをもっと大衆化していきたいという考えを持っていますから、アジアマーケットの拡大は大切なことです。たとえば、現行のルールではほとんど番狂わせが起きないから、ワールドカップなどでも上位4チームはいつも顔ぶれが一緒です。それでは、おもしろくない。アジアがやっても勝てないようなルールでは、アジアでは絶対に広まらないでしょう。やっぱり、あるスポーツを普及しようと思ったら、自国の代表チームが世界で戦えるようなルールでないと面白くない。

原 田なんだかんだ言っても、今、日本は世界第2位の経済大国です。スポーツを繁栄させていくためには企業の力が必要不可欠なわけですから、そこに戦略性があってもいいと僕は思っています。

平 尾それが日本には、ありませんね。ラグビーだけでなくさまざまなスポーツで、ここ最近、日本が有利になるようなルール改正は行われていない。では、日本はそんなに立場が弱いのかというと、そんなことはないはずです。

原 田いろんな意味で貢献してるはずだから、もっと発言権を持ってもいいはずなんです。

平 尾そうですね。これからの日本のスポーツの発展を考えるならば、競技力の向上は当然ですが、外回りの戦略性を持つことも必要でしょうね。本日は、ありがとうございました。

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