これまで、学校や企業単位で行われてきたスポーツが、大きく変わろうとしている。余暇時間の増大や健康への関心の高まりなど、人々がさまざまな形でスポーツとの関わり求め始め、行政も「総合型地域スポーツクラブ」の育成に取り組み始めている。だが、その一方では、スポーツが地域文化として必ずしもスムーズに根付いていかない現実を指摘する声も多い。スポーツを地域の“文化”として根付かせるためには、今、何が必要なのだろうか。スポーツ振興の現場をフィールドワークにしている大阪体育大学教授・原田宗彦氏と語り合った。

平 尾指導する側が変わらなければいけないという話をしてきましたが、それ以前に、最近、スポーツをする子どもたちが減りつつあるという問題もありますね。

原 田由々しき事態ですよね。学校のクラブ数を見ても、サッカーとバスケットについては増えているようですが、ラグビーはずいぶん減少しています。高校ラグビーなどは、全盛期の半分ぐらいになってしまったのではないですか?

平 尾そうなんです。

原 田そういう意味で、日本のスポーツは大きな曲がり角に来ていますね。サバイバルゲームが始まっているというか…。

平 尾しかも、そのサバイバルゲームが、非常に拡大されてきているように思いますね。例えば、少し前なら「どこのチームか」という戦いだった。高校ラグビーなら、大阪だと“啓光学園と大阪工大高”といったようにチーム間の戦いだったものが、近年はそういうレベルではなくなってきている。“野球対サッカー”というようになってきています。

原 田そうなんですね。

平 尾さらに最近では、「メガ・コンペティション」という時代に入って、戦いがどんどん大きくなっています。そこでは、“チーム間”とか“スポーツ間”という範囲ではなく、“スポーツ対テレビゲーム”とか“スポーツ対パソコン”、“スポーツ対塾”“スポーツ対携帯電話”などといったところまで視野を広げて見なければならないところまできている。“スポーツ”という小さな世界だけを見ていても、ダメなんですね。

原 田確かにそういう様相になってきましたね。

平 尾だから、「野球だ、サッカーだ、ラグビーだ」と、それぞれが主張し合っているのではなく、もっとスポーツ同士が連結し、必要なら教育とも連動して戦っていかないと。

原 田まずはそこで戦って、パソコンやテレビゲームに取られていた子どもたちを、スポーツのほうに引っ張り出さないといけないんですね。

平 尾今は、そういう戦いをやるべきときだと思います。

 

●プロフィール
●原田宗彦(はらだ むねひこ):大阪体育大学教授
1954年、大阪府生まれ。1977年に京都教育大学特修体育学科卒業後、84年ペンシルバニア州立大学体育・健康・レクリエーション学部博士課程修了(PhD)。鹿屋体育大学助手、大阪体育大学講師を経て95年より現職に。現在、日本オリンピック委員会ゴールドプラン委員、スポーツ振興基金審査委員、Jリーグ経営諮問委員会委員なども務める。著書に『スポーツイベントの経済学』(平凡社新書)、『スポーツ産業論入門第三版』(杏林書院)など。

 

 
 
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