S C I X今、土田さんがおっしゃられた、「会社から応援はしてもらいながら、クラブとしては独立」というところのイメージをもう少し具体的にお話いただけませんか。

土 田そうですね。例えば、東京にはたくさんJリーグのチームがあって、我々のグラウンドのある調布市にもFC東京が、すぐ近くにあるんですよ。そういうところと交流しながら、やがては一緒に組む形でクラブ化が出来ないかなと。また、うちは各地にビール工場もあって、そこを本拠地に活動している運動部もあるんです。例えば、バレーボール部などは関西の箕面にあるんですが、ここは新興住宅地で、地域密着を模索してもなかなか根付かない。そういうことならば、東京に持ってきて、関連企業にくっつけ、ラグビー部同様に独立したようなチームになって、それで一緒に活動出来ないかとかね。

S C I Xなるほど。

土 田そのためにSCIXの活動なども、ホームページとかでいろいろ見させてもらっています。ただ、どうしてもそうなると専任が出てくるわけですね。そういう部分で、プロの専任者が必要かどうか、またその人間に本当に給料を払っていけるかどうか、まだまだ課題は多いんですけれども。

平 尾今、土田が言ったような問題は、実は僕ら自身にもあるんですよ。ただ、これからの企業スポーツのあり方として、地域というのが一つのベースになってこないといけない。あくまでも企業はサントリーラグビー部のメインのスポンサーであって、そこにプラスして、ほか人たちが参画しやすいような状況が、これからの業スポーツには絶対に必要だと思います。サントリーの会社が100%所有というところから、実はサントリーの所有は60%で、あとの30%くらいはファンクラブの会費とかで賄っていますよとか、あとの10%はチームの持つ肖像権とかで財政運営していますということが、これから必要になってくる。要するに、企業も「100%の所有」から、「支援」というものにシフトして行く必要があるということです。

土 田まさにその通りで、我々もその方向を模索しているわけです。

平 尾我々の場合で言うなら、神戸にはJリーグの「ヴィッセル神戸」とか、プロ野球の「オリックス・ブルーウェーブ」とかがあるわけですが、それが一つの連合体としてやっていけないか。そうすれば、ラグビーでもサッカーでも、もちろん野球でも一つのファンクラブに入れば、全部のゲームを見に行けたりする優遇が、ファンも受けられる。これは、どの競技団体にとってもものすごくいい案で、まったく損な話ではないんです。ところが現状は、野球の人は野球の中だけの繁栄を考えているし、サッカーの人たちは野球に負けまいと、敵視すらしている(苦笑)。これは、ものすごく視野の狭い話です。

土 田もうそんな闘いは終わってるんだけどね。

平 尾そう。今はもう、「スポーツ対テレビゲームの戦い」なんですよ。子どもはみんな、そっちの方にとられている。だから、スポーツは一丸となって、そういうものに対抗していく措置が必要になってくるんです。そういう意味では、今言ったようにスポーツ全体で考えていかないといけない。一つのグループとして考えていかないとね。例えば、自分がものすごいラグビーファンで、ラグビーの試合をよく見に行く。ところが、子どもはサッカーのファンで、サッカーの試合を見たがっている。そうなると、今までだったら「どっちを取るか」の選択になると思いますが、もし1年間ファミリーメンバーとかになって、神戸でやるゲームは全て格安で見ることができるということになれば、自分がラグビーを見に行く場合は子どもを連れて行けるし、子どもが見たいサッカーの試合は一緒に付いていってやることも出来る。そうすると、ラグビーのファンも増えるし、サッカーのファンも増える。実際の競技人口はともかく、観客という視点で言えば、少なくともスポーツ全体のファンが増える。そういう構造になるんです。そういうマインド・チェンジが、今、求められていると思いますね。

<<つづく>>

 
 
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