SCIXコーチインタビュー[第六弾]

髙木 聡SATOSHI TAKAGI


髙木コーチの出身である三重県四日市市といえば、ラグビーよりサッカーが盛んな土地柄。小学生で170cm越えという恵まれた体格の髙木コーチも、中学時代はサッカー部に所属。高校進学後もサッカーに取り組むつもりだったが、あることがきっかけでラグビー部へ。そして、大学(大東文化大)、社会人(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)とラグビー人生を歩み、2010年現役引退。同期入社でもある近藤前コーチの後を引き継ぎ、この春よりSCIXコーチに就任。自身の考える「ラグビーの魅力」、SCIXで初めて体験する「コーチングの難しさ」などを聞いた。

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「やるからにはちゃんとやりたくて」花園出場常連ラグビー部へ入部

──ラグビーを始めたのは?

髙木:

高校(四日市農芸高校)からです。神戸製鋼の同期でもある今村雄太に「ラグビーやらへん?ここのラグビー部、毎年全国大会出てるんやで」と誘われたのがきっかけです。彼とは中学校から一緒で、中学時代は僕はサッカーをやっていて、彼は野球部でした。僕は高校でもサッカー部に入るつもりやったんですけど、彼に誘われてラグビーをやることになりました。当時のラグビー部は幽霊部員が大半で、ほとんど活動していないようなクラブやったんですけど、それでも結構強くて。

──ラグビーを始めた当初はどうだった?

髙木:

当時はガリガリでしたけど身長は小学校の頃から170cm以上あって、高校の頃には今くらいの身長があったので、下級生の頃から試合には出させてもらえていました。ただ、三重県自体、ラグビースクールとかも少なくラグビーが盛んではないこともあって、僕自身も高校に入るまでルールはもちろん、ラグビーというもの自体を知らなかったんです。うちの高校のラグビー部はそういう選手の寄せ集めで、「ラグビーの素人集団」みたいな感じでした。

──それでも花園に連続出場?

髙木:

そうですね。ライバル校があまり無いこともあって、僕が入学した時点で10年連続出場とかだったと思います。僕らの年代は、今も現役でやっている今村雄太も含めて、たまたま体格的に恵まれているメンバーが結構いたので。試合の戦い方としては、ひとりひとりのポテンシャル頼みで、最後は走り勝つみたいな、完全に体力勝負のゲームをしてましたね(笑)。メンバーに恵まれたので、それでも勝てたんでしょうね。3年時には花園でベスト16まで行きました。

──サッカーよりラグビーは楽しかった?

髙木:

当時の監督がうまいことやるんですよ(笑)。大阪の人なので口が上手いんですよね。入った当初はちょっとした遊び感覚のことから始まって、「ええやん!ええやん!」っておだてられて。言い方が悪いかもしれないですけど、洗脳されたみたいになってて。気づいたらラグビーやってましたね(笑)。それと、負けることが少なかったんですよ。大阪工大附属高校(現・常翔学園)とかとやっても、僕らの年代は引き分けとか、いいところまで行ってたんですよね。それでどんどん楽しくなって、いつの間にか気づいたらハマってましたね。

──ラグビーのどこが好き?

髙木:

身体を張ってるところが好きですね。「男のスポーツ」って感じが好きです。今でこそ女子ラグビーも盛んになってきてますけど、当時はまだ女子はなかったですし。

──高校時代はどんな練習を?

髙木:

高校時代の監督はラグビー経験者じゃなくて、陸上か何か他の競技出身の方だったんです。なので練習は基本走ることばっかりやったんですよね。陸上トレーニングみたいな感じでした。ラグビーの練習をした記憶がないくらい走ってましたね(笑)。当時は「やらされてる感」いっぱいでした(笑)。ラグビーのスキルとかは、大学に進学したOBが来てくれて教わるっていう形でしたね。OBの方に教えてもらうのは楽しかったです。

──途中でポジションをコンバートしたのは?

髙木:

高校時代の監督と、高校のOBで、神戸製鋼のOBでもある方から、「今日からバックスやれ!」って言われたのがきっかけです。最初は「えっ!?」てなったんですけど、当時のチームのバックスで前に出られる選手もいてないし、お前は足も速いから、ってことで。それでいきなりFLからCTBに。でも、楽しさはありましたね。華もあるなと(笑)。フォワードの憧れですからね、バックスは。結果的に、コンバートしてもらったことで神戸製鋼までラグビーで来れたかなとは思ってます。コンバートを勧めてくれたことに感謝しています。

──関東大学リーグ戦の強豪・大東大への進路については?

髙木:

高校2年の時に、当時の大東大の監督が視察に来られて声をかけていただきました。でも、その時は進路については何も考えていなかったんです。お金もかかるし、親にそんなに迷惑かけられへんなと思って、当初は大学に進学する気もなかったんです。それが、3年の時にまた監督から声をかけていただいたので。大東大に進学しました。大東大時代は、トンガ出身で日本代表経験もあるシナリ・ラトゥさんが監督をされていたので、トンガっぽいガチガチのコンタクト練習ばっかりやってました(笑)。

──社会人チームでスティーラーズを選んだ理由は?

髙木:

当初、今村と一緒にって言われていたんですよね。今村は学生時代(早稲田大)から日本代表に選ばれるほどの選手でしたから、「アイツを取るために自分にも声がかかったんや…」っていう感じに受け取っていたんです。完全にひねくれていましたね(笑)。 そしたら、僕を単独でも取ります、ってことを言ってもらったので。

──当時のスティーラーズの指導者は平尾誠二さんかと思いますが、彼からはどんな言葉を掛けてもらいましたか?

髙木:

神戸製鋼に入社する前、スティーラーズの練習にも何回か参加させてもらったんですが、そのときはよく褒めてもらいました。「君ならトップリーグでも大型のバックス選手として出られるで」といった体格的なこととか、スキル的なこととか・・・褒め殺しみたいな感じですかね(笑)。

──平尾さんの指導については?

髙木:

僕が入った当時はGM兼総監督という形でいらして、現場にはよくみえていたんですね。自分の足りないところを明確に指摘してくださって、こういう練習をしなさいとアドバイスをしてくださっていました。具体的にああしなさい、こうしなさいって教えてくださって、非常にわかりやすかったです。ただ、全てをボン!って言ってしまうと人間って考えなくなっちゃうじゃないですか?だから「こうするためにはどうしたらいいと思う?」という言い方で、僕に考えさせるように促してくれました。ラグビーに対する勉強もできましたし、それまでの指導とは違ったアプローチで新鮮でした。でも、グラウンドでは求められるレベルのプレーができず、拡声器でしょっちゅう怒られてましたけどね(笑)。

「やるからには勝ちたい!勝たせてあげたい!」新人コーチの想い

──SCIXのコーチになって?

髙木:

本社総務って内示をもらった時は「本社総務?どこやろ?」って感じでした(笑)。「まさかSCIXって?」感覚でしたね。現役引退して、ほぼ7年間ラグビーからかけ離れたところにいたので。「このタイミングでまたラグビーに関わるのか!?できるかな?」って思いましたね。加古川(神戸製鋼所加古川製鉄所)でやっていた業務とは全く違う内容なので、前任の近藤に教えてもらいながら、日々こなしている感じです。

──SCIXラグビークラブの印象は?

髙木:

女子は元気ですね! 初めて練習に行った時は人数がギリギリやったんで、女子の練習に僕も入ってやったんですけど15分でボロボロにされました(笑)。バテてついていけませんでした(笑)。それに比べると男子は少し静かかな~って印象ですね。せっかくクラブに会費を払って、限られた時間の中でやっているのに、なんでこんなにダラダラしてんのかな?って思いましたね。グラウンドの外では結構、おしゃべりしてるのに、グラウンド入ったら静かになってしまう。こんな静かなんの?って感じでした(笑)。

──その点についてどう指導してますか?

髙木:

外で喋らんでいいから、中で喋れって。自分のやりたいことを率先してみんなに言えって。なんも言わんかったらわからんからって言いましたね。性格上静かな子もいますけど、そんな子らも頑張って声を出すようになりました。僕が来てからはグラウンドの中での会話は増えたと思います。声のないサイレントゲームなんてないじゃないですか(笑)。基本的には選手主導でやっているので、やりたいことをやってもらったらいいんですけど、やるからにはダラダラするなと。限られた練習時間なので、その短い時間は集中してやりましょうと言ってます。

──時には叱ったりもするんですか?

髙木:

僕は普段からあまり怒らない人間なんですよ。指導者っていう立場なので、時には叱らないといけない時もあるので、怒ってるような感じを出して言うことはありますけどね。女子には既に「タカちゃん」って呼ばれてるくらいで、すっかりいじられてます(笑)。僕、元々いじられキャラで、神戸製鋼の諸先輩方にもいじってもらってきましたし。中高生とか年下とか、全然気にしないタイプなので。女子の場合は、向こうから歩み寄ってくれるので有り難いなと思ってます。僕、身体もデカいですし、顔もこんなんなので結構怖がられるんですよね(笑)。男子は同性なので女子とはまた違いますけど、素直な子たちばっかりなので、こちらから寄っていけばコミュニケーションもとれますし、ちゃんと言うことも聞いてくれますし。

──SCIXで初めて「コーチング」というものに直面していると思いますが?

髙木:

今まで指導者という立場になったことがないので、戸惑いながらやってる部分はあります。SCIXでラグビーをしている子どもたちも、それぞれいろんな事情や状況がある中で、「ラグビーがやりたい!ラグビーが好き!」という気持ちなんだろうな~と。ただ、普通の高校の部活とは違って、週2回各2時間という限られた時間の中でいかに有意義にできるか?どうしてあげたらいいのかな?という想いの中でやっています。今日できなかったら明日やればいいや、じゃないのでね。クラブチームの指導者の難しさは、そこにあるのかなと思っています。

──練習メニューなどは髙木コーチ自身が考えて取り組んでいる?

髙木:

そうですね。スティーラーズで僕が経験したトップレベルの練習はできないのはわかっているので、それをかみ砕いて、自分が高校生レベルでやってきた練習に上乗せするイメージでやってます。ラグビー経験のある子たちは、さらにその上のプレーができるようにサポートしますし、初心者で入って来た子たちには、少しでも上のレベルの子たちに追いつくように指導しています。前任の近藤コーチが取り組んでいたメニューも継承されていますので、それをベースにしつつ自分なりにアレンジしてやっています。

──髙木コーチの目指すラグビー、伝えたいラグビーとは?

髙木:

SCIXはクラブチームとは言え、毎年、どの大会でどこまで勝ち進むかということを目標にしていますから、そこまでチームを連れていってあげたい。単純に言えば、目標まで勝ち進むチームにしたい。そのために何をしたらいいか。ただ僕もひとりひとりの能力を全て把握できていないので。把握していく中で「この子ポジション変えてあげてもいいのかな?」とか考えながらやっていこうと思っています。まだ戸惑いながらやっている段階ではありますけど、やる限りは勝たせてあげたいので、毎年チームごとの目標が達成できるように僕自身が努力していくつもりでいます。

──目指す指導者像は?

髙木:

元木由記雄(現・京都産業大学ラグビー部バックスコーチ)さんですね。現役時代、元木さんと一緒にセンターを組んだこともあって、元木さんがよく教えてくださってたんです。いいところはちゃんと褒めてくれますし、悪いところは悪いと指摘してくださいました。今、京産大の指導をされていて、神戸製鋼でもアドバイザーをされてましたし、SCIXのコーチもされてましたよね。元木さんは、ひとつひとつのプレーについて、感覚だけじゃないくて、具体的に言語化して教えてくれるんです。それが、とても勉強になりました。また責任感が物凄い強い方で、ラグビーのようなチームスポーツについては「もし自分がミスしたら、チームに迷惑がかかる」という考え方の持ち主なんです。だから、元木さんとセンターを組んでいたときも「お前がここでサボったら、結果としてチーム全体に迷惑をかけるだろう」というチームプレーの基本を教えてもらいましたので、その教えを受け継いで、僕も指導していこうと思っています。

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髙木 聡(たかぎ・さとし)

1984年10月22日、三重県出身。中学までサッカー部に所属。四日市農芸高校進学を機に、ラグビーを始める。高校2年の花園出場直前にFLからCTBにコンバートされ、高校3年時の花園ではベスト16進出。2007年神戸製鋼入社。CTB、WTBとして活躍。2010年現役引退後は社業に専念。2018年4月よりSCIX事務局の運営に従事し、SCIXラグビークラブでは新人コーチとして「女子の部」「男子中高生の部」の指導に取り組んでいる。ニックネームは「タカちゃん」。

取材・文/中野里美