■ 第7回SCIXスポーツ・インテリジェンス講座 第3回目となるSCIXスポーツ・インテリジェンス講座は、講師にメジャーリーグのアトランタ・ブレーブスで国際スカウト駐日担当を務める大屋博行氏をお迎えして開催しました。 大屋氏は、高校中退後に渡米し、アリゾナ州スコッツデール市立コロナド高校で投手として活躍した後に帰国、プロ野球の阪神タイガースで練習生としてプレー、その後、歯科技工士などを経て98年にメジャーリーグのアリゾナ・ダイヤモンドバックスの国際スカウト駐日担当を務め、00年から現職に。メジャーリーグのスカウトをはじめて16 年の経験を持つ大屋氏に、メジャーリーグ流の人材発掘について話していただきました。 大屋氏がアリゾナ・ダイヤモンドバックスのスカウトになって間もない頃、日本ではスカウトというのは、プロ野球で活躍した人でなければという考えがあり、実績のない大屋氏は、門前払いの連続でした。また日本のプロ野球は逆指名の時代でもあり、契約金がすべて。アメリカでは考えられない大金が、動いていたそうです。そうして16年が経ち、長年の活動の成果が認められ、今では「ブレーブスの大屋さんですか」と声をかけられるようになったと感慨深げに話されました。 そもそも日米間に紳士協定があることをご存知でしょうか。メジャーリーグでの日本国内の選手のスカウトにおいて「ドラフトにかからない選手で」という紳士協定が存在するのです。それゆえメジャーリーグの日本国内のスカウトにおいて、ポテンシャルは高いが、その力が発揮できずプロ野球のドラフトから漏れているような選手を獲り、教育していかなければなりません。これまでに大屋氏は、国内で6名の選手と契約をしました。その中に、近畿大学から日本IBMへと進んだ190cmのサイドスローのピッチャーがいます。彼は抜群のサイズを誇るが、ストレートは130km/h台。話を聞けばウエイトトレーニングも一切行わず、食事管理もしていなかったそうです。そこで大屋氏がウエイトトレーニングや食事の重要性を説いたところ、その2ヶ月後には、15kg増量し、140km/h台後半まで出るようになりました。そうして彼はアメリカに渡り、2Aからはじまり、「2シーム」と呼ばれるボールを覚え、みるみるうちに力をつけて3Aに上がりました。ちなみに彼は、日本ではドラフトのリストに載っていない選手だったそうです。 このような経験を踏まえ、「メジャーリーグのスカウトと日本のスカウトとは目の付けどころが違います」と大屋氏はキッパリ。「その選手がアメリカでプレーしたら、どれぐらい成長できるのかを目利きして選手を捉えなければならないのです」と言います。もちろん選手の評価は感覚だけに頼ってはいけないので、早見表、ストップウオッチ、スピードガンを使って評価するそうです。 またアメリカと日本の高校生では、野球経験の差がまったく違うと指摘。日本の高校生は野球漬けの毎日で、プロに入るとケガをする確率が高く、それを乗り越えた選手がプロとして活躍できるが、アメリカの高校生は、年間3ヶ月ほどしか野球をやっておらず、それゆえ、プロになってから野球を1から必死に学んで、頑張ったものだけが活躍できると話されました。そこには、アメリカと日本の選手の育成法にも違いがあります。日本ではドラフト上位指名の選手はファームでも試合に出られるが3位以下はまず出られません。しかしメジャーリーグには、傘下にいくつもの下部チームがあるので、常に試合に出ながら技術を磨き、マイナーリーグから上に上がって最終的にメジャーリーグを目指すようなシステムになっています。ただアメリカでは「健康であって当たり前」という考え方が根底にあるので、怪我をすれば、将来性を見込まれた選手でない限り、手術してもらえず、すぐに首になってしまうという厳しい面もあるのですと話されました。 そして話題は、昨年秋のドラフトで話題となった花巻東高から日本ハムに入団した大谷翔平選手について。紳士協定があるため大屋氏が彼をスカウトすることができませんでしたが、大屋氏は彼に日本ハムへ行くべきだとアドバイスしたそうです。その理由は、日本ではドラフト1位というだけで優先的に育成・起用されますが、メジャーリーグでは、育成において特例などはなく、全員が平等の扱い。「それはもったいない」と彼に説かれたそうです。 最後に、大屋氏はメジャーリーグのスカウトにとって大事な点として 今回も、約80名の方々にご参加いただき、受講者の方々からも「大変興味深い内容であった」との声をいただきました。受講者の皆様方、ご参加ありがとうございました。 |
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