■ 第7回SCIXスポーツ・インテリジェンス講座
第1回「『スポーツとは何か、コーチングとは何か』〜人を育て、導くためには何が必要か。
指導者は「本気で怒り、褒める力」を持っているか〜」
講師:平尾誠二氏
日時:2013年4月20日(土)19:00〜20:30
会場:神戸国際会館セミナーハウス
昨年に引き続き開催する運びとなった「第7回SCIXスポーツ・インテリジェンス講座」。第一回目の講座は、SCIX理事長であり、神戸製鋼ラグビー部ではGM兼総監督としてチームの運営・指導にあたる平尾誠二氏が講師として登壇し、『スポーツとは何か、コーチングとは何か』というテーマで行いました。
冒頭、平尾氏は、昨今、取り上げられている指導者の体罰問題に言及し、この問題以降、日本のスポーツ指導の現場は萎縮しているのではないかと疑問を投げかけました。そして、伏見工業高校時代の恩師である山口良治先生との関係に触れ、本当に相手のことを思うなら、指導者はもっと熱く、気持ちをぶつけても良いのではないかと提唱、それから本題へと入っていきました。
平尾氏が高校生だった頃は、指導者から殴られることが当たり前の時代。特に氏が3年生の時はキャプテンだったこともあり、他の選手よりも山口先生から怒られることが多かったそうです。当時は、先生に対し、憎しみしかなかったそうですが、その反面、自分たちのことを心の底から思ってくれていることが分かっていたので、少しでも先生ががっかりした顔をすると、「あの人のために頑張らないといけない」という気持ちになったと話します。そして、そのような気持ちになった数々のエピソ−ドを披露しました。
ひとつは、気の抜けたゲームをした時のこと、「人間はその日、100%の力を振り絞ってラグビーでもやらないと、成長はないんだ。足の先まで力を振り絞っても0.0001%しか人間は成長しない。だから毎日、もっているものを全部出し切る気でラグビーに取り組まないと、人間なんて成長しない!」と感情をあらわに怒られ、殴られそうです。またある時は、体育館で正座をさせられ、2時間の説教。その後、「俺の言うことが分かったらその姿を見せてみろ。今からグラウンドでランニングだ」と言われて走らされましたが、みな、足がしびれて歩く程度の速度しかスピードが出ません。「怒られるかな?」と思いながら先生の方を見ると、先生は何も言わずに涙を流していました。それを見て、「この先生は本気で俺たちのこと思っているんだな」と痛感したそうです。平尾氏は、山口先生の指導法は、「怒る」、「感情をあらわにする」、「本気で怒るコーチング」だったと言います。コーチングには、「褒めて育てる」という方法もありますし、もちろんその方が指導者も恨まれません。また教えられる方も、気持ちがいいものです。しかし、本気で相手の心を揺さぶることで、気持ちが変わる。成長を考えたら、本気で相手にぶつかる、本気で怒ることが、必要ではないか。そう、締めくくりました。
その後、質疑応答が行われ、そこで平尾氏は、「コーチングとは相対的なものであり、絶対的なものではありません。選手一人一人によって教え方、導き方は違います。一本化してしまいがちですが、普段の観察をよく心がけ、個人差や特性を知って、相手の気持ちを考えるようにしてほしいですね」と話されました。
80名を超す受講者は、メモを取るなど、熱心に耳を傾け、第1回講座は盛況のうちに終了しました。次回は、5月18日(土)、なでしこジャパンの元キャプテン、池田浩美氏を招いて行いますので、皆様のご参加お待ちしております。
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