■ SCIXスポーツ・インテリジェンス講座 今年度最後となるSCIXスポーツ・インテリジェンス講座を、8月4日(土)に開催。今回の講師は、テレビ、ラジオ等で活躍中のスポーツライター・玉木正之氏をお招きしました。ロンドンオリンピック開催期間中ということもあり、話題はオリンピックに。玉木氏は、今回のロンドンオリンピックは、「ボーダーレス五輪」だと明言されました。 まず一つ目は、国境の壁がなくなったということ。例として、イギリス代表チームに、帰化をした多くの黒人選手がいたことを挙げられました。日本では、お笑い芸人の猫ひろしさんがカンボジア国籍を取得したことが記憶に新しいですが、国籍を変えて五輪出場を目指すように、国籍を選ぶことができる時代になりました。またこれとは別に、今回、イギリスは、アメリカ合衆国のような多民族国家としての道を歩んでいくことを五輪という舞台で全世界に発信したと玉木氏は話されました。 三つ目は、健常者と身体障害者の壁です。ロンドンオリンピックでは、陸上男子400mと1600mリレーの南アフリカ代表に、オスカー・ピストリウス選手が参加しました。彼は生まれつき、膝より下がない状態で生まれ、両足ともに義足です。北京パラリンピックに出場しましたが、今回、オリンピックメンバーに選ばれました。義足に関しては、有利になるのではないかと論議されましたが、玉木氏は、それならば眼鏡はどうなのか?と。笑いも誘いながら、話は進み、テーマはドーピング問題へと移りました。臓器移植を受けた人が参加する世界移植者スポーツ大会という大会があることをご存知でしょうか?実は移植を受けた人は、筋肉増強剤の一種であるステロイド等を服用しなければいけません。これらの薬品はドーピング薬物でもあります。もしこのようなステロイド等を使用している人たちが五輪に参加することになったら、どうか?と参加者に質問を投げかけました。 そして四つ目は、メディアです。オリンピックといえば、テレビが主流でしたが、今回のオリンピックでは、ツイッター、フェイスブックをはじめ、ソーシャルメディアが大きな役割を果たしました。IOCはアスリート・ハブを立ち上げ、選手がつぶやくことを積極的に推奨。他にも、イギリス国内では、ホームページで、全競技全試合が見ることができたそうです。これからのオリンピックは、インターネット中心へと移行していくのではないかと、氏は述べられました。 ロンドンオリンピックを「ボーダーレス五輪」という視点で話され、これまでと変わった点を上げられた玉木氏ですが、最後に今後スポーツが発展していく中で、たったひとつ変わらないものがあると明言されました。それは、地域密着です。地域密着のスポーツはなくなることはないときっぱり。レアルマドリード、FCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、ニューヨークヤンキースなどは、世界中にファンがいますが、そこに住む市民たちがチームを誇りに思っている、地域に密着したチームです。特にレアルマドリード、FCバルセロナなどのヨーロッパのチームなどは、バスケットボールをはじめ、他の競技のチームも持っており、市民はそこでプレーすることもできるのです。しかし日本では地域密着のスポーツが少ないという現状があります。それは新聞社などのマスメディアが、スポーツチームを持っているということが理由として挙げられると指摘。またスポーツとマスメディアが密接に関わりを持ったために、批判ができなくなり、スポーツジャーナリズムが機能しなくなってしまったと嘆かれ、これは日本のスポーツ界にとっても不幸だと発言されました。もちろんマスメディアが、地域で活躍している場合もあります。ただ日本のスポーツ界での常識は、世界的に見ると、時として非常識であるという現実を認識して欲しいと玉木氏は参加者に訴えられました。その後、質疑応答が行われ、90分間の講座は終了しました。 四回にわたるSCIXスポーツ・インテリジェンス講座にご参加いただいた皆様、ありがとうございました。次年度も楽しみにお待ちください。 |
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