■ 第9回SCIXスポーツ・インテリジェンス講座
『スポーツの多様な見方、考え方──クロス・スポーツ・インテリジェンス』

第3回「W杯に導く指導者」と「W杯で勝てる指導者」
講師:平尾誠二氏(神戸製鋼コベルコスティーラーズGM)×山本昌邦氏(サッカー解説者)
日時:2015年8月22日(土)19:00〜20:30 
会場:神戸国際会館セミナーハウス
受講者:160名

今年最後の「SCIXスポーツ・インテリジェンス講座」は、神戸製鋼コベルコスティーラーズGMを務める平尾誠二氏とサッカー解説でお馴染みの山本昌邦氏をお招きし、「W杯に導く指導者」と「W杯で勝てる指導者」をテーマに対談形式でお話いただきました。

平尾氏は、現役時代に第1回、第2回、第3回ラグビーワールドカップに出場、現役引退後、1997年から2000年まで日本代表監督を務め、1999年に開催された第4回ワールドカップウェールズ大会にチームを導きました。また山本氏は、現役時代はディフェンダーとしてユース代表、ユニバーシアード代表、日本代表で活躍した後、指導者としての道を進み、ワールドユース日本代表コーチや日本代表コーチとしてフィリップ・トルシエ氏やジーコ氏を支え、現在はサッカー解説者として活躍中です。経験豊富なお二人の対談ということで、指導者を含め多くの方々にお集りいただきました。

トークは冒頭、ラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズ氏と今年3月からサッカー日本代表監督を務めるバヒド・ハリルホジッチ氏について。山本氏はハリルホジッチ監督を「完璧主義」といい、「選手のモチベーションを引き出すのが上手い」と評価。平尾氏は、ジョーンズヘッドコーチを「チームづくりに長けている。スタイルとしては規律を重んじるタイプ」と説明した後、「ただトップ10入りまでは規律だけでもいいが、そこから先は想像力、発想力も必要である」と持論を展開しました。山本氏も「言われたことだけをする選手は使いものにならない。意外性や想像力を持って、それ以上のことができる選手が世界に通用する」と同調。
9月から開幕するラグビーワールドカップに向けて、平尾氏は「ラグビー日本代表はこれまで規律を重んじてきたので、いきなり想像力を求められると難しいと思うが、ワールドカップでは、南アフリカ、スコットランド、サモアとの2試合で1勝以上を上げて、プール最終戦のアメリカ代表戦に臨むことができれば決勝トーナメント進出が見えてくる」と日本代表にエールを送りました。

その後、話題は1996年アトランタオリンピックで、サッカー日本五輪代表がブラジル五輪代表を1-0で下した“マイアミの奇跡”へ。この時、山本氏は西野朗監督のもとでコーチを務めていました。山本氏は「奇跡と言われていますが、それまでに多くの情報を集めて分析し、選手が得意な部分を出せるように対策を研究した結果です。それが勝利につながった」と振り返り、偶然の勝利でないことを強調。また岡田武史氏が監督を務め、日本代表初のベスト16進出を果たした2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会での決勝トーナメント1回戦vsウルグアイ代表戦でのPK戦についても触れ、「ゴールキーパーに相手がどこに蹴ってくるのか過去5年間の情報を渡していました。負けはしましたが、キーパーは相手をかく乱するような動きをしてくれた。そういう裏をかくような選手を育てていかないといけない」と想像力や発想力の大切さについて再度語りました。

そして最後に山本氏が良い指導者というのは「答えを教えるのではなく、気付かせてあげるのが良い指導者である」と断言すると、平尾氏も「想像力を持たせるようにするのが指導者の仕事でもある」とコメント。さらに部活動などで、子どもたちを指導するアドバイスとして山本氏は「日本代表でプレーできる選手は一握りだが、スポーツは乗り越える力や仲間をおもいやる力などを育ててくれる。勝利を追求するだけでなく、良いところを褒めてあげて子どもたちが自信を持てるようにしたり、質問をし続けて子どもたちが答えを見つけられるようにしてあげたりし、成長させることも楽しみにしてほしい」と話しました。

2時間に渡る対談は、部活動等で指導をする方々にとってもヒントが多い内容になったかと思います。ご参加いただいた皆様方、ありがとうございました。

講座終了後、SCIX創設15周年を語らう懇親会を開催。受講者の皆さんにも多数ご参加いただき、楽しいひと時を過ごしました。


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