■ 第9回SCIXスポーツ・インテリジェンス講座
『スポーツの多様な見方、考え方──クロス・スポーツ・インテリジェンス』

第2回「スポーツを書く」と「スポーツをしゃべる」
講師:玉木正之氏(スポーツ・ジャーナリスト)×赤木誠氏(毎日放送アナウンサー)
日時:2015年7月18日(土)19:00〜20:30 
会場:神戸国際会館セミナーハウス
受講者:80名

これまでと趣向を変えて、同じスポーツでも競技性や表現方法、指導者の資質が対極に位置するジャンルの方々を講師に招き、対談形式で実施している第9回「SCIXスポーツ・インテリジェンス講座」。7月18日に開催された2回目では、「活字報道」からスポーツ評論家の玉木正之氏、「実況放送」から毎日放送アナウンサーの赤木誠氏のお2人に、それぞれ「スポーツを書く」、「スポーツをしゃべる」というテーマに講演していただきました。赤木氏は、プロ野球の日本シリーズやリーグ優勝が決まる試合でも数々の実況を担当、また高校ラグビーの実況も務められています。しかしもともとアナウンサー志望ではなかったそうで、「運だけで来ましたね」と告白。その言葉で会場は和やかムードになりました。

対談では、玉木氏が「原稿には面白い書き方というのがあるが、それを誰かに教わるわけではない。たとえ競技の知識はあっても、日本の国語の教育がベースにあるので、文章を書けない人が多い」と指摘すると、赤木氏は、実況アナウンサーになるには訓練を積まないといけないと述べ、氏もプロ野球の実況を実際に任されるようになるまで、2年半かかったことを説明。
玉木氏はそれを受けて「新聞記事には法則のようなものがある。これは訓練して身につけるもの。ただし面白い記事というのは、その法則を無視したもの。学校で教わるような“起承転結”の文章ではなく、転からはじめる“転結承起”なんです。そういう惹き付ける文章を冒頭に持ってないと読者は読んでくれない」と話すと、赤木氏は「逆にスポーツをしゃべる世界では、いい実況というのは、起承転結。起こったことをきちんと説明していくことが肝心なんです」と述べました。

このほか、赤木氏はテレビとラジオでは実況のスタイルが違うことを説き、「ラジオは映像がない分、見たままを伝えなくてはいけないので、体力がいります。テレビは反対に映像があるので、予測をしたり、ネタを挟んだりしていかなければいけない」と苦労されている点を吐露。ちなみに、ルールブックに精通している玉木さんのコラムを参考にすることもあるそう。本人を前に赤木さんは「盗用じゃないとは思うんですが…」と確認する場面も。

その後、話題はインタビューについて。玉木氏は「インタビュアーは取材対象者に喋らすようにしないといけない。ただ書くことの利点は、聞いた話をそのままの順番で書く必要はない。いかに面白くまとめるか。そこが醍醐味である」と語ると、赤木氏は「お立ち台でのヒーローインタビューを見ていると、質問になっていないものもありますね(苦笑)。我々もインタビューは選手にどれだけ喋らせるかが重要です」と断言。

ほかにも、アメリカと日本の記者や実況放送の違い、さらに芥川賞を受賞したお笑い芸人のことや新国立競技場のことなど、次々と興味深い話題に展開しました。恒例の質疑応答では、赤木氏に高校ラグビーファンの方から実況でこころがけていることは?という質問があり、「基本的にしっかり正確に確実に伝え、スタジアムの臨場感を感じてもらえるように雰囲気も盛り込んでいくことを念頭においています」と回答。2時間におよぶ講座は今回も、充実した内容となりました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。


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